2018年8月14日火曜日

独立行政法人の優先的調達制度

 特定の分野の受注機会拡大などを図るため、公共調達を利用し当該分野からの調達を優先的に取り扱う手法(優先的調達)については、独立行政法人にも適用又は準用されている。本項目の執筆時点では、少なくとも以下の優先的調達が制度化されている。

  • 官公需法(「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」(昭和41年法律第97号))に基づく官公需契約
  • グリーン調達法(「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(平成12年法律第100号))に基づくグリーン調達
  • 環境配慮契約法(「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」(平成19年法律第56号))に基づくグリーン契約
  • 障害者優先調達推進法(「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」(平成24年法律第50号))に基づく障害者優先調達
  • 女性活躍推進法(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」)に基づくワーク・ライフ・バランス等推進企業優先調達

※平成23年10月28日の男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会ポジティブ・アクションワーキング・グループ調べによる4事例に、女性活躍推進法の事例を追記している。

 優先的調達の具体的手法としては、①発注件数等の数値目標を定め実績をフォローアップするもの(官公需契約、グリーン調達、障害者優先調達)、②競争参加資格や評価点加点などの競争における優遇措置を講じるもの(官公需契約、グリーン契約法、ワーク・ライフ・バランス等推進企業優先調達)などが挙げられる。各独立行政法人では、府省における取り組みに準じて、毎年度の数値目標策定や優先調達の実績の実績を公表している。また、調達等合理化計画にこれら優先的調達への取り組みを記載している事例も見受けられる。なお、平成27年度以降、各府省がこのような優先的調達の制度化を検討する際には、内閣官房行政改革推進本部事務局及び財務省に対して、事前協議などを行うこととされた。


(参考1)
 行政改革推進会議が作成した「調達改善の取組指針」においては、平成27年度以降の優先的調達の導入について、「他の取組とのバランスを欠いたものとならないよう配慮」するよう求めている。

○「調達改善の取組の強化について(調達改善の取組指針の策定)」(平成27年1月26日行政改革推進会議)(抜粋)2.特定の政策目的での公共調達の活用
 これまで、「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」(昭和41年6月30日法律第97号)を始め、特定の政策目的の実現にも資するよう公共調達を活用する取組がいくつか実施されている。こうした取組であっても、公共調達である以上、経済性、公正性等の諸原則と調和したものとすることが必要である。
 このような観点から、今後、各府省庁においてこのような取組の実施を検討することとなる場合には、経済性、公正性等の諸原則との整合性について十分留意するとともに、他の取組を参照してその知見を活用することにより、他の取組とのバランスを欠いたものとならないよう配慮することとし、行政改革推進本部事務局及び財務省に対して情報提供及び事前協議を行うものとする。


(参考2)
 平成27年7月1日の衆議院経済産業委員会では、中根康浩委員より、官公需法と障害者優先調達法による、おのおのの優先的調達が「食い合うようになってはいけない」として、以下の質疑がなされている。

○第189回国会経済産業委員会第25号(平成27年7月1日(水曜日))(抜粋)
中根(康)委員:
(略)
 最後に、法案について一つだけ触れたいと思います。
 今回の改正法案、官公需法による創業十年未満の新規中小企業者への配慮としての調達と、それから既に制定されている障害者優先調達法による障害者就労施設からの調達、これをそれぞれ伸ばしていかなければいけない、ふやしていってほしいということでございます。これがお互いに食い合うようなことになってはいけないし、できればそれぞれの特性、それぞれのよさを生かした調達の仕方として配慮してほしい。
 つまりは、障害者からの調達ということであれば障害者らしい分野で、十年未満の新規中小企業者ということであれば、これは最新の技術を持ったとか、独自の技術を持ったとか、そういったものを生かしていく、こういうような計画を立ててほしいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

関大臣政務官:
 中根議員おっしゃるとおりで、それぞれ法律があるということは、それぞれの法律の趣旨がありまして、大切な内容だという意識で取り組んでいこうと思っております。
 改正官公需法の方では、各省各庁の長が、毎年度、中小企業、小規模事業者の受注機会の増大の目的のために、中小企業、小規模事業者からの調達目標を盛り込んだ契約方針を策定しますし、一方、障害者優先調達推進法に基づいた障害者就労施設の調達目標等を、しっかりと意見を酌んだ調達方針を、そちらの方はそちらの法律でまたしっかりとつくっていこう。
 これは、方針がそれぞれ相矛盾することなく、適切に、緊密なまた連絡、情報提供等を受けながら、相談しながら、双方の法律をしっかりと生かしていくように努力してまいります

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。