2018年8月14日火曜日

調達等合理化計画

 「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」(平成27年5月25日総務大臣決定)により、独立行政法人は、年度ごとに「調達等合理化計画」を策定し、主務大臣による評価を受けることとされている。主務大臣の評価は、独立行政法人評価の一環として実施される。

○経緯(随意契約見直し計画等)
 平成19年度以来、独立行政法人では「随意契約見直し計画」を策定し、同計画に基づく随意契約比率(金額比での契約全体に占める随意契約の割合など)の管理を実施してきた。これにより、独立行政法人全体で1兆461億円分を占めていた「競争性のない随意契約」が約7割減の3,066億円まで減少する(平成19年12月24日総務省行政管理局発表)に至った。さらに、平成21年には、「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」(平成21年11月17日閣議決定)により「随意契約見直しをさらに徹底して行う」こととされ、「全契約に占める競争性のない随意契約の比率を約1割程度へ」引き下げる(平成22年5月21日総務省行政管理局発表)目標が掲げられた。
 他方で、この随意契約見直し計画に基づき、随意契約の多くが一般競争入札へと移行した結果、特に研究開発法人について、①仕様公開による技術情報の流出リスク、②事務コストの増加、③研究の遅延による国際競争からの脱落、などの弊害が指摘され、

  • 「例えば、最先端の研究開発機器等の損壊への円滑な対応や、研究開発を効率的かつ効果的に推進するための研究開発機器の“使い勝手のよさ”の観点も含め、随意契約によることができる基準を研究開発の特性を踏まえて作成する」(「国立研究開発行政法人に係る運用改善の方向性について」平成24年4月25日民主党人材科学技術イノベーションPT)
  • 「一般競争にこだわらず、研究の実態にあわせた調達ができるようにすべき」(「わが国の研究開発力強化に関する提言」(平成25年5月14日自由民主党政務調査会科学技術・イノベーション戦略調査会))
といった提言がなされた。
 平成25年の「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)において、「現行の随意契約見直し計画の枠組みや契約実績の公表について見直しを行い、調達に関する新たなルールを策定する」とされ、翌年には会計検査院より「特殊性及び専門性が高い開発研究に係る業務委託であって契約相手方が特定されるなどの場合」であっても一般競争入札を実施しているケースなどが見受けられているとして、「一律に一般競争入札等に移行させるのではなく、透明性を確保しつつ、一般競争入札等に要する事務処理量の増加、契約締結や成果物納入までに必要となる期間等も勘案した上で、合理的な調達になるよう取り組むことが重要である」(「独立行政法人における関連法人の状況について」(平成26年9月会計検査院))との指摘がなされている。
 平成27年の改正独立行政法人通則法施行後、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」に基づく
「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」が定められ、新たに、各独立行政法人において「調達等合理化計画」を策定することとなった。

○調達等合理化計画の位置付け
 「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」のほか、「「目標及び指標の記載例」の改正について」(平成27年5月25日総務省行政管理局長改定)で示された中長期目標の記載例で「「調達等合理化計画」に基づく取組を着実に進める」との例文が示されていることから、各独立行政法人の中期目標等においても調達等合理化計画の策定・運用を明記している場合がある。調達等合理化計画の詳細については、「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」のほか、
「調達等合理化計画策定要領」(平成28年2月2日総務省行政管理局改定)においても記載内容や策定・公表時期等が示されている。

○策定・改定・公表
 業務実績報告書等の独立行政法人評価資料と同様に、6月末までを策定期限としている。必要な場合には、年度途中で改定することが可能。独立行政法人が調達等合理化計画を策定・改定した際には、公表するとともに速やかに主務大臣に報告し、主務大臣より総務大臣及び独立行政法人評価制度委員会へ通知することとされている。調達等合理化計画の内容が多岐にわたる場合等には、概要を記した要約版を作成するなどの工夫が求められている。

○記載事項
 「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について」及び「調達等合理化計画策定要領」で示されている調達等合理化計画の記載要領は次のとおり。

(1)調達の現状と要因分析
 前年度の契約状況について統計を掲載し、現状を分析する。
(2)重点的に取り組む分野の選定
 改善の余地があると認められる分野を選定し、記載する。
(3)調達合理化の内容
 具体的な記載例としては、共同調達の実施、官公需法やグリーン購入法、グリーン契約法等に基づく特定分野への受注機会確保への配慮、及び整合などが例示されている。必要に応じて、国における先行事例も参考とする。
(4)調達に関するガバナンスの徹底
 随意契約の事前チェック体制や不祥事防止のための取り組みについて記載する。具体的には以下の視点を盛り込むこととされている。
  視点①:発注・契約権限の明文化(規程の整備)
  視点②:競争性を確保した業者の選定
  視点③:随意契約の法人内部におけるチェック機能の確保
  視点④:発注者以外の職員の立会いによる検収の徹底
  視点⑤:研究者、調達担当者に対する、調達に関する不祥事事案等の研修の実施

(5)調達等合理化の目標
 上記(3)から(5)の取組について目標(可能な限り定量的な目標とする)を記載する。
(6)自己評価の実施方法
 年度終了後に調達等合理化計画の実施状況を自己評価し、主務大臣による評価を受け、その結果を次年度以降の調達合理化計画に反映すること等を記載する。
(7)調達等合理化の推進体制
 各独立行政法人における体制、契約監視委員会の点検等について記載する。「調達等合理化計画策定要領」では、推進体制の総括的な責任者は総務担当理事を基本とする考えが示されている。

○様式
 「調達等合理化計画策定要領」別紙1では、調達等合理化計画の作成例が示されている。別紙1で示された作成例のうち、「(1)調達の現状と要因分析」については継続把握の観点で表を修正しないよう求めている。また、「調達等合理化計画策定要領」別紙2として、各独立行政法人の「調達の全体像」の記入様式が示されており、当該様式のエクセルファイルを総務省へ提出するよう求めている。

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