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2020年1月7日火曜日

新設独立行政法人の会計監査人候補者選定等に係るガイドライン(平成15年8月20日農林水産省大臣官房経理課・文書課)

 「新設独立行政法人の会計監査人候補者選定等に係るガイドライン」(平成15年8月20日農林水産省大臣官房経理課・文書課)は、平成15年に農林水産省大臣官房の経理課と文書課の連名で「提示」されたもの。総務省行政管理局等の制度官庁のクレジットが付されていないことから、あくまでも、農林水産大臣を主務大臣とする独立行政法人宛に提示されたものとみられる。独立行政法人通則法においては、独立行政法人の会計監査人は主務大臣が選任することとされており、この具体的なプロセスとして、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)においては、「独立行政法人の長は、監事の同意を得た上で、会計監査人の候補者の名簿を主務大臣に提出し、その選任を求めるものとする」旨が示されている。「新設独立行政法人の会計監査人候補者選定等に係るガイドライン」では、これを踏まえ、独立行政法人の長から「会計監査人の候補者」を決定するにあたって、「透明性・公平性の確保」の観点での具体的な作業を示したものと解される。
 
本文:

2019年12月4日水曜日

三様監査

 独立行政法人における監事監査及び会計検査人監査並びに独立行政法人内部の監査の総称。総務省独立行政法人評価制度委員会等で用例が見られている。
 
〇位置づけ
 独立行政法人通則法においては、「監事は、独立行政法人の業務を監査する」とされているほか、(政令で定める基準以上の独立行政法人について)会計監査人が監査を行うこととされている。これら、法定の監査に加え、「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」(平成26年11月28日総管査第322号総務省行政管理局長)では、「業務方法書に記載すべき内部統制システム」の一環として内部監査に係る措置が業務方法書事項であることを明らかにしている。
 
〇相互関係
「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」では、監事と会計監査人、及び監事と内部監査部門との連携が掲げられており、いわば独立行政法人の内部統制システム上は監事を核として、「三様監査」の担い手が連携するよう制度設計がなされていると言える。なお、独立行政法人において監事直属の補佐職員が置かれていない場合には、内部監査部門の職員を臨時に監事監査要員に充てる事例もおり、人的・体制面においても、監事監査と内部監査は密接な傾向が見られている。また、会計監査人は監事に対して、報告義務を持つことが独立行政法人通則法に規定されている。
他方で、各独立行政法人の監事等が自ら定めた「監事監査指針」(平成26年12月19日独立行政法人、特殊法人等監事連絡会)においては、会計監査人の監査を監事が監視する立場にある旨が示されており、前述の会計監査人の監事に対する報告義務と合わせて、厳密には会計監査人と監事は対等の立場にはなく、監事が優越する立場にあると言える。
加えて、内部監査については「独立行政法人の業務」の一環として行われるものであることから、当然に、監事の監査対象には内部監査部門も含まれると解される。従って、監事と内部監査部門は、法律に基づく監査側(監事)と被監査側(内部監査部門)の関係と、業務方法書に基づく監査にあたって相互に連携する関係の二面性を持つ、と言えるが、万一、監事と内部監査部門の利害が対立した場合には当然に前者の関係(法律に基づく監査関係)が優先されると考えられる。

2019年11月19日火曜日

コンプライアンス推進週間(国立研究開発法人)

 「コンプライアンス推進週間」は、国立研究開発法人協議会のコンプライアンス専門部会が設定した週間。令和元年現在、27の国立研究開発法人が参加している。平成30年6月6日の第6回国立研究開発法人協議会総会において、「コンプライアンス専門部会からの報告について」と題し、コンプライアンス推進週間を設ける旨が示された。平成30年度は12月3日から同7日までを期間に開催された。
 令和元年度は、12月2日から同6日までを期間として、研修の合同実施等に取り組むと見られている。参加国立研究開発法人の「統一スローガン」として、「コンプライアンス 守る意識が あなたを守る 職場を守る」が制定されている。
 
(参考)
コンプライアンス推進週間参加国立研究開発法人一覧
※国立研究開発法人産業技術総合研究所が公表した「コンプライアンス推進週間」ポスターに掲載されているもの
 
  • 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
  • 国立研究開発法人情報通信研究機構
  • 国立研究開発法人物質・材料研究機構
  • 国立研究開発法人防災科学技術研究所
  • 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 国立研究開発法人理化学研究所
  • 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
  • 国立研究開発法人海洋研究開発機構
  • 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
  • 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
  • 国立研究開発法人国立がん研究センター
  • 国立研究開発法人国立循環器病研究センター
  • 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
  • 国立研究開発法人国立国際医療研究センター
  • 国立研究開発法人国立成育医療研究センター
  • 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
  • 国立研究開発法人森林研究・整備機構
  • 国立研究開発法人水産研究・教育機構
  • 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
  • 国立研究開発法人土木研究所
  • 国立研究開発法人建築研究所
  • 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
  • 国立研究開発法人国立環境研究所

2019年7月18日木曜日

大学・国立研究開発法人の外国企業との連携に係るガイドラインー適切なアプローチに基づく連携の促進ー(中間とりまとめ)(令和元年6月21日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)決定)(府政科技164号)

 「大学・国立研究開発法人の外国企業との連携に係るガイドライン-適切なアプローチに基づく連携の促進-(中間とりまとめ)」(令和元年6月21日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)決定)(府政科技164号)は、令和元年に内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)が決定したもの。文書番号は府政科技164号。前年の「統合イノベーション戦略」(平成30年6月15日閣議決定)において、「我が国の大学や国研等が外国企業に戦略的に対応することによって我が国の国際競争力を強化」することを目的に、海外資金獲得増大に資する海外ファンドの獲得や国立研究開発法人等と外国企業との共同研究に関して、「安全保障貿易管理等に配慮しつつ、課題や解決策の方向性等を検討し、外国企業との連携に係るガイドラインを2019年度に策定」する旨、示されたことを受けて制定された。
 大学及び国立研究開発法人に対する外国企業からの投資について低調な水準にあるとの現状認識を踏まえつつ、「グローバルな研究開発の競争を勝ち抜くためには、国内外を問わず一流の企業・研究開発機関との連携強化が不可欠」とし、安全保障貿易管理法令や不正競争防止法等を遵守しつつ、リスクマネジメントや方針・体制の整備に取り組むことで「win-winの関係を目指」すことを求めている。

本文:
「大学・国立研究開発法人の外国企業との連携に係るガイドライン-適切なアプローチに基づく連携の促進-(中間とりまとめ)」(令和元年6月21日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)決定)(府政科技164号)

2019年6月20日木曜日

会計監査人の損害賠償責任

 独立行政法人の会計監査人は、役員と同様に独立行政法人通則法の規定により、独立行政法人に損害を与えた場合の損害賠償責任を負うこととされている。なお、業務方法書において最低責任限度額の算定に関する規定が設けられている場合、その算定方式は監事と同様に、年間報酬相当額(退職手当の年換算を含む)の2倍とされている。
 独立行政法人の会計監査人の業務内容を巡っては、総務省行政管理局が、「独立行政法人における随意契約の適正化の推進について(依頼)」(平成19年11月15日総務省行政管理局長・総務省行政評価局長事務連絡)において、会計監査人による「入札・契約の適正な実施について徹底的なチェック」を求めた一方で、日本公認会計士協会からは当該要求が会計監査人による財務諸表監査の範囲を超えるとした「独立行政法人の随意契約について」(平成20年2月13日日本公認会計士協会公会計担当常務理事)が提示されており、見解の相違が見られている。このため、例えば入札・契約のチェックにおける過失を理由として、独立行政法人が会計監査人に対して損害賠償を請求することが妥当か、否かについては、慎重な検討が必要と思料される。

2019年6月19日水曜日

役員の損害賠償責任

 独立行政法人の役員に対し課せられる、任務懈怠に対する損害賠償責任のこと。平成26年の独立行政法人通則法改正において明記され、平成27年度より適用されている。

◯起源
 平成24年、当時の民主党政権下において、会社法の規定を参考とし、独立行政法人においても役員の損害賠償責任を規定する、独立行政法人通則法の改正が試みられた。同改正法案は廃案となったものの、政権交代を挟んだ平成25年、改めて独立行政法人改革の検討が進めることとされ、役員の損害賠償責任についても、自民党政権における検討に継承された。
 この流れを踏まえ、内閣官房の「独立行政法人改革に関する有識者懇談会」では「役員に職務忠実義務及び任務懈怠に対する損害賠償責任を課し、業務運営上の義務と責任を明確化する」旨を提言し、独立行政法人通則法改正案においてもその旨が盛り込まれた。

◯役員賠償責任保険の導入
 独立行政法人通則法改正後、会社法会社において先行事例のある、役員賠償責任保険の導入が見られている。役員賠償責任保険については、当事者(役員)個人が加入するケースと組織的に加入(会社又は独立行政法人による一部又は全額負担)するケースのいずれかが考えられる。
 後者のケースについては、役員が損害賠償責任に萎縮し経営判断の積極性を欠くことを回避する観点での導入が考えられ、少なくとも会社法会社に関しては、会社による全額負担も適法とする解釈(経済産業省コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会)が見られている。独立行政法人においても、少なくとも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機や独立行政法人国立病院機構において組織的な加入事例が見られている。

◯免責
 独立行政法人通則法においては、主務大臣の承認による免責規定のほか、役員が「善意でかつ重大な過失がない場合」において、以下のような算定方式から算定される値を限度に免除を可能とする規定が設けられている。この規定を適用する場合は、予め業務方法書においてその旨を明記しておくことが要件となる。

免責額の限度=賠償責任額-最低責任限度額

最低責任限度額(役員が最低でも負うべき賠償の額)=年間報酬相当額×係数


 最低責任限度額の算定に係る係数については、独立行政法人通則法第25条の2第4項の規定に基づき総務大臣が定める額等を定める件(平成27年3月30日総務省告示第116号)により、役員の年間報酬相当額(退職手当の年換算を含む)に、代表権を有する役員は6倍、監事については2倍、その他の役員については4倍とされている。

2019年5月21日火曜日

会計法令(調達・契約)からの独立

 国の調達・契約に関する規定を設けた会計法(昭和22年法律第35号)及び予算決算及び会計令(昭和22年勅令165号)は、主として国(各省各庁)内部の会計制度を定めたものであり、一部を除いて独立行政法人には適用されない。このため、「独立行政法人における随意契約の適正化について(依頼)」(平成18年3月29日総務省行政管理局長事務連絡)では、独立行政法人の業務方法書及び会計規程等において、各々の調達・契約に関する規定を明確にする考えが示されている。
 なお、WTO政府調達協定や日本政府の自主的措置が適用される、独立行政法人の一部の調達・契約については、会計法令に準拠して国と同質的に行うことが求められている。また、特定国立研究開発法人を除く独立行政法人については、少額随意契約の基準額について、国と同等とすることとされている。
 なお、主務大臣により措置される独立行政法人の予算要求などについては、国の内部の手続きの延長にあると言えることから、「会計法令から独立している」とは言い切れない。

2019年5月17日金曜日

独立行政法人の顧問弁護士

 平成22年度時点で、当時104存在した独立行政法人のうち、93の独立行政法人が弁護士と顧問契約を締結している(財務省調べ)。委嘱発令によるものを含めて全て随意契約により、弁護士・法律事務所を選任する形態が採られている。顧問契約以外に特定案件についてスポット的に法律相談等を実施したケースも79件確認されている。このことから、独立行政法人においても企業と同様に、日常的に企業法務や予防法務、紛争対応等に取り組んでいることが伺える。
 なお、これまでに独立行政法人の顧問弁護士業務を受けた法律事務所として、いわゆる四大法律事務所では、少なくとも西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所及び長島・大野・常松法律事務所が独立行政法人の顧問弁護士として活動した実績が確認されている。なお、企業と同様に、独立行政法人においても、法務戦略を秘匿する観点で、顧問弁護士としてどの者を選任しているか、については非公開としている場合も見られている。

2019年3月25日月曜日

監事監査指針(平成26年12月19日独立行政法人、特殊法人等監事連絡会)

 「監事監査指針」(平成26年12月19日独立行政法人、特殊法人等監事連絡会)は、平成26年の独立行政法人、特殊法人等監事連絡会臨時総会で了承された指針。「独立行政法人改革等に関する基本的な法人」(平成25年12月24日閣議決定)において、「監事監査の指針」を「見直す」旨が示されたことを受けて、「監事監査に関する参考指針について」(平成16年3月2日独立行政法人、特殊法人等監事連絡会)を改訂する形で定められた。独立行政法人の監事は、監査に当たり、「監事監査指針」を「法人の性格、業務内容等に応じ」て活用するとされている。主な概要は以下のとおり。

○目的
 「監事の職責とそれを果たす上での心構えを明らかにし、併せて、その職務を遂行するための監査体制の在り方と、監査に当たっての基準及び行動の指針」を定めたものとしている。

○監事の職責
 独立行政法人の長と同様に、「主務大臣から任命された独立の機関として、法人の業務を監査」することにより、「法人の健全な業務運営を確保し、社会的信頼に応える良質な法人の統治体制の確立に資する責務を負う」とされる。

○監事の基本的心得
 以下の8項目が示されている。

  1. 独立性・公正不偏の態度を保持
  2. 監事向けの研修へ参加する等、常に自己研鑽に努める
  3. 適正な監査視点の形成のため、業務運営全般の見地から運営上の課題についての認識を深め、業務運営状況の推移と法人を巡る環境の変化を把握するよう努める
  4. 平素より独立行政法人の役職員等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境整備に努める
  5. 監査機関たる地位にあるものとしての正当な注意をもって、監査を行う
  6. 監査意見を形成するに当たり、よく事実を確かめ、必要があると認めたときは、弁護士等外部専門家の意見を徴し、合理的な判断を行う
  7. 職務上知り得た秘密の保持に十分に注意する
  8. 退任する際は、監査業務の継続性を図るため、担当した業務に関する情報を書面又は適宜の方法により、後任の監事に引継を行う

○独立行政法人の長との定期的会合
 監事と独立行政法人の長との間で定期的な会合を設け、「監査上の重要課題等について意見を交換し、法人の長との相互認識と信頼関係を深めるよう努める」ことが求められている。

○業務監査の内容
 以下の手続きにより独立行政法人の業務を監査するとされている。
  • 中期目標等及び中期計画等に基づき実施される業務の監査(中期目標等及び中期計画等の達成状況、財務内容の改善状況などの監査)
  • 法人の長の意思決定の監査(独立行政法人の長の意思決定に関与する役員会その他重要な会議への出席、主務大臣への提出書類の調査などの監査)
  • 内部統制システムに関する監査(独立行政法人が業務方法書に記載した内部統制システムの構築・運用の状況に関する監査)
  • 監事を除く役員が不正の行為を行う、又はその恐れがあると認めるとき、役職員から他の役職員について同様の報告を受けたときなどに、地帯なくその旨を独立行政法人の長及び主務大臣に報告する

○会計監査の内容
 主務大臣に提出する財務諸表が、法人の財政状態、運営状況、キャッシュ・フローの状況及び行政サービス実施コストの状況を適正に表示しているかどうかについて検証するとされている。

○監査の方法
 書面及び実地により、年間を通じて実施するとともに、随時又は臨時の監査を行う。その際、監査方針、監査項目、監査方法、監査実施時期等を定めた年間の監査計画を作成し、独立行政法人の長に通知する。

○会計監査人等との連携
 会計監査人及び独立行政法人評価制度委員会との連携、並びに会計検査院、総務省行政評価局、財務省等が行う調査等の活用などに努めることとされている。
→独立行政法人、特殊法人等監事連絡会
→独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)
→「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第322号)
→独立行政法人における随意契約の適正化の推進について(依頼)(平成19年11月15日総務省行政管理局長・総務省行政評価局長事務連絡)

本文:
「監事監査指針」(平成26年12月19日独立行政法人、特殊法人等監事連絡会)

2019年3月24日日曜日

独立行政法人の監事の監査報告書の記載例について(参考通知)(平成27年4月20日総務省行政管理局管理官(独立行政法人制度総括)・総務省行政管理局管理官(独立行政法人評価総括)事務連絡)

 「独立行政法人の監事の監査報告書の記載例について(参考通知)」(平成27年4月20日総務省行政管理局管理官(独立行政法人制度総括)・総務省行政管理局管理官(独立行政法人評価総括)事務連絡)は、平成27年に総務省行政管理局の関係管理官の連名により、各府省の担当課長宛に発出された事務連絡。平成27年4月の改正独立行政法人通則法施行に伴い、監事に監査報告の作成が義務付けられたことを踏まえ、発出したもの。
 平成27年5月22日の第2回独立行政法人評価制度委員会で明らかにされたところによれば、「独立行政法人、特殊法人等監事連絡会」より、監事監査報告の「具体的な記載方法について示してほしい」という要望が寄せられたことを受け、日本監査役協会の監査役報告書のひな形を参考に、総務省行政管理局において作成された。「独立行政法人の監事の監査報告書の記載例について(参考通知)」では、監事監査報告の内容は、「独立行政法人を所管する主務大臣が定める主務省令で具体化され、その詳細な記載方法等は、主務省令を所管する主務大臣において検討されるものと承知して」いる、としつつ、その検討の参考となる記載例を「通知」している。
→独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)
→「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第322号)
→独立行政法人における随意契約の適正化の推進について(依頼)(平成19年11月15日総務省行政管理局長・総務省行政評価局長事務連絡)

本文;
「独立行政法人の監事の監査報告書の記載例について(参考通知)」(平成27年4月20日総務省行政管理局管理官(独立行政法人制度総括)・総務省行政管理局管理官(独立行政法人評価総括)事務連絡)

2019年3月8日金曜日

一定の事業等のまとまり/セグメント

 独立行政法人の事業計画や評価、決算等の基本的な項目単位の粒度を示す概念。独立行政法人の内部管理の観点や財務会計との整合性を確保した上で、少なくとも、目標(中期目標、中長期目標又は年度目標)及び評価において「一貫した管理責任を徹底し得る単位」のこと。
 事業計画や評価での粒度については、「独立行政法人の目標の策定に関する指針」(平成26年9月2日総務大臣決定)において、中期目標管理法人の中期目標、国立研究開発法人の中長期目標及び行政執行法人の年度目標については、「法人の長の下での自律的なPDCAサイクルを設定し、法人内部のマネジメントを発揮し得るよう、適正かつ厳正な評価に資する一定の事業等のまとまりごとに目標を策定する」とされている。また、「独立行政法人の評価に関する指針」(平成26年9月2日総務大臣決定)では、中期目標、中長期目標又は年度目標項目を評価単位とする原則が示されている。
 「一定の事業等のまとまり」は予算や決算等の会計的粒度とも整合することが求められる。すなわち、独立行政法人の中期計画、中長期計画及び事業計画に係る予算等について(平成27年3月24日総務省行政管理局修正)では、中期目標管理法人及び国立研究開発法人に対し年度計画上で、行政執行法人に対し事業計画で、「事業等のまとまり」ごとの予算の見積りを作成するよう求めている。また、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」等では、財務諸表等において「「一定の事業等のまとまり」ごとの区分に基づくセグメント」により情報を開示すること、さらに、「一定の事業等のまとまり」を細分化するか、同一の粒度で「運営費交付金の収益化単位の業務」を設定する旨が示されている。
 すなわち、上記の規定を総合すると以下のような原則関係となる。

目標における項目=評価における項目=年度計画の予算の粒度=財務諸表等のセグメント≧運営費交付金の収益化単位

 「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)においては、「事業等のまとまりごとに予算の見積り及び執行実績を明らかにし、著しい乖離がある場合にはその理由を説明させることとする」及び「会計基準について、損益均衡の仕組みを維持しつつ、事業等のまとまりごとに区分された情報を充実する」とされており、上記の原則関係は、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」に基づき整備されたものである。
 なお、年度計画又は事業計画における「事業等のまとまり」ごとの予算の見積もりについては、決算時に決算額との差額を明らかにすることとされており、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準」に関するQ&A」の決算報告書の「様式例」では、年度計画又は事業計画に記載されている予算金額を使用する考えが示されている。
→中期計画/中長期計画/事業計画
→年度計画
→独立行政法人の中期計画、中長期計画及び事業計画に係る予算等について(平成27年3月24日総務省行政管理局修正)
→評価書様式について(平成26年9月2日総務省行政管理局長)(総管査第254号)
→運営費交付金の収益化/収益化基準

2019年3月1日金曜日

研究開発法人及び国立大学法人等による成果活用事業者に対する支援に伴う株式又は新株予約権の取得及び保有に係るガイドライン(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)

 「研究開発法人及び国立大学法人等による成果活用事業者に対する支援に伴う株式又は新株予約権の取得及び保有に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)は、平成31年に内閣府内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)と文部科学省科学技術・学術政策局の連名で発出されたガイドライン。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第63号、旧研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(研究開発力強化法))の改正により、研究開発法人は、研究開発法人発ベンチャーへの支援に努めるとともに、一定の条件下で株式又は新株予約権を取得及び保有することができるようにされたことを受けて、株式の取得等に係る基本的な考え方について定める必要性が認められたため、ガイドラインを定めることとなった。ガイドラインの概要等は以下のとおり。

○前史
 従来、国立研究開発法人においては、「株式の保有が、他の企業の経営権を有することにつながり業務の膨張を招くことになること」(平成30年11月30日衆議院文部科学委員会柴山文部科学大臣答弁)への懸念から、株式の取得・保有が「抑制的に取り扱われてきた」(同)。他方で、「研究開発型ベンチャーをより一層生み出しやすい環境を整備し、研究開発法人及び国立大学法人等との連携を促す」重要性が認識されるにいたり、研究開発力強化法が改正され、研究開発法人が、「資力が弱いが有望な」研究開発法人発ベンチャーに対する育成支援として、株式又は新株予約権を取得及び保有することが「できる」こととなった。
 なお、この法改正は「できる」規定を設けたものであるため、「株式等の取得及び保有を必ず行わなければならないというものでは」ない(前出、文部科学大臣答弁)とされている。

○対象
 研究開発法人が支援に伴い株式等を取得することができるのは、「特に必要な場合」に限られる。具体的には、研究開発法人の研究成果を活用した「事業の有望性が高い」研究開発法人発ベンチャーであって、当該研究開発法人による「支援に対し、現金による支払いを免除又は軽減すること」が当該研究開発法人発ベンチャーの経営の加速のために特に必要と考えられる場合が対象とされている。

○株式等の取得に係る手続き等
 研究開発法人は、研究開発法人発ベンチャーに対し、その資力その他の事情に応じた支援を行うことができること、及び支援プログラムの基本的事項(対象資産、支援対象の条件、株式取得・議決権行使の方針等)について適切に周知・公表することが重要とされている。また、研究開発法人発ベンチャーの側から株式等を提供したい旨の意向が示された場合には、株式等の価値を公正・客観的に判断できるよう、外部専門家の意見等を活用する必要があるとしている。

○適切な管理
 法令上、研究開発法人が保有する株式等について保有年限等は定められていない。こうした中で、株式等の管理・売却等に係る対応については、組織体制及び規程等を整備することが望ましいとされている。ガイドラインでは、管理担当者及び管理部署を指定、設置するなどして、定期的な評価等を行うこととする、と言い切りで管理要求を示している。

○関係規制等遵守
 独立行政法人通則法や独立行政法人会計基準、金融商品取引法におけるインサイダー取引規制などに万全を期し、また、研究開発法人発ベンチャーの経営体制や株主公正に反社会勢力などとの関係が認められないことを確認する必要があるとしている。特に、独立行政法人通則法における「密接関連法人等」に対する役職員等の再就職斡旋規制、独立行政法人会計基準で求められている「特定関連会社」との契約・取引状況の公表について、具体的に例示している。

○情報の管理・公開
 研究開発法人は、案件毎に株式等を取得するとの判断に至った経緯及び理由、取得株数の考え方を記録し、保持する必要があるとしている。加えて、所管府省に対しては、適時適切な報告を行うとともに、企業秘密に配慮しつつ、適時・適切な情報の公開を行うこととしている。

○中(長)期目標等への反映
 国立研究開発法人の場合は中長期計画、国立研究開発法人以外の研究開発法人については中期計画にて、新株予約権の権利行使に伴う支出について、計画上の予算、終始計画及び資金計画にその財源を計上する。なお、余剰金又は積立金を原資に権利行使を行う場合には中長期計画又は中期計画の余剰金の使途又は積立金の使途に適切に反映することとしている。

○新株予約権の会計処理
 新株予約権の会計処理は「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」に特段の定めがないことから、公正妥当な企業会計の基準に準拠することとし、会計監査人と事前に協議した上で適切に処理することを求めている。

→研究開発法人による出資等に係るガイドライン(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)
→研究開発法人
→国立研究開発法人
→「国立研究開発法人」以外の「研究開発法人」
→中期計画/中長期計画/事業計画
→独立行政法人の中期計画、中長期計画及び事業計画に係る予算等について(平成27年3月24日総務省行政管理局修正)

本文:

2019年2月27日水曜日

研究開発法人による出資等に係るガイドライン(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)

 「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)は、平成31年に内閣府内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)と文部科学省科学技術・学術政策局の連名で発出されたガイドライン。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第63号、旧研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(研究開発力強化法))の改正により、研究開発法人の出資機能が拡大されたことを受け、出資等に係る基本的な考え方を示したもの。研究開発法人を所管する府省に対し、研究開発法人による出資等の業務の適切な実施に万全を期すよう求めている。
 法改正では、研究開発法人が、その研究成果を用いて事業を行う「成果活用事業者」や民間移転・共同研究開発等の企画及びあっせん等を行う「成果活用等支援法人」に対して出資を行う余地が拡大した。他方で、研究開発法人が独立行政法人として業務・財務の健全性を維持しつつ、出資等の業務を実施するうえで、留意すべき事項や組織体制等の対応事項について定める必要性が認められたため、ガイドラインを定めることとなった。ガイドラインの概要は以下のとおり。

○出資の対象
 ガイドラインでは、出資の対象を「研究開発法人発ベンチャー(成果活用事業者)」、「研究開発法人発ベンチャーに対して助言・資金供給等を行うベンチャーキャピタル又はファンド」、「成果活用等支援法人」の3つに整理している。

○出資財産
 各研究開発法人の自己収入をその原資とすることを基本としている。なお、自己収入としてガイドラインが掲げているのは、寄付金、特許料収入、受託収入などであり、国民負担に帰さない収益としている。

○現物出資
 現物出資を行う場合には、研究開発法人が所有する知的財産及び設備等が想定されるとしつつ、その際も補助金適正化法との整合、出資先が倒産・休眠状態に陥った場合に備えて知的財産の返還を予定する条項の整備などを求めている。

○人的・技術的援助
 具体的な想定として、研究開発法人の研究者等による助言等の支援、研究開発成果の実用化等に精通した専門人材の紹介、ベンチャーキャピタルや民間金融機関等と連携した研究開発法人ベンチャーへの経営人材の紹介などを掲げている。

○体制整備等の必要な措置
 出資等に係る専門性と客観性を担保するため、次のような項目に関する規程を整備しなければならない、としている。
  1. 外部有識者の委員会による審議
  2. 出資業務に関する管理者及び担当部署の設置
  3. 出資先の選定に当たっての具体的な審査項目(事業計画、財務内容、経営体制・技術的能力等)
  4. 出資後の状況把握及び対応
  5. 利益相反マネジメント
  6. 民間ベンチャーキャピタル等との連携

○大臣認可事項
 成果活用事業者以外への出資等については、研究開発法人の本来機能の一部を外部に実施させるものであるとして、主務大臣の認可及び財務大臣への協議を行うとしている。

○中(長)期目標等への反映
 国立研究開発法人の場合は中長期目標及び中長期計画、国立研究開発法人以外の研究開発法人については中期目標及び中期計画にて出資の方針や体制、達成すべき成果を定める必要があるとしている。このため、主務大臣による独立行政法人評価においても、出資等の成果が評価されると考えられる。なお、業務方法書についても同様の内容を記載することとしている。

○関係規制等遵守
 独立行政法人通則法や独立行政法人会計基準、金融商品取引法におけるインサイダー取引規制、反社会勢力との関係不保持などに万全を期すよう求めている。

○府省への報告
 研究開発法人は所管府省に対し、出資内容や出資決定プロセス、背景、回収見込みなどを適時適切に報告し、密に連携するよう求めている。
→研究開発法人
→国立研究開発法人
→「国立研究開発法人」以外の「研究開発法人」
→中期目標/中長期目標/年度目標
→中期計画/中長期計画/事業計画
→業務方法書
→認可文書(独立行政法人)
→提出文書(独立行政法人)

本文:
「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)

2019年2月15日金曜日

独立行政法人国際協力機構における予算逼迫問題/JICAの資金ショート問題

 「独立行政法人国際協力機構における予算逼迫問題」とは、平成29年度に独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という。)において発生した、当該年度の支出見込額が予算額を上回る見通しが顕在化した事態。「JICAの資金ショート問題」と表現される場合もある。この問題により平成29年度にJICAが予定していた事業の一部について、規模の抑制、あるいは凍結等の措置がとられたほか、契約相手先に対する支出の繰延べ等が発生し、「契約相手先等関係者に負担をかけたこと、新規のODA事業の実施規模を縮小」(外務大臣)する結果に至った。
 この問題を受けて、JICAでは、「予算執行管理強化に関する諮問委員会」を設置し、予算執行管理体制の改善、内部統制強化に取り組むこととした。直接事象である「予算逼迫問題」に加え、根本原因を含めた問題については「JICA運営費交付金予算執行管理問題」として再発防止策が検討されている。

○前史
 JICAは、途上国で事業を実施するという特性上、事前に正確な予算計画を立案しても計画どおりに実施することに困難が伴う予見不可能性を有している。また、契約の履行後に実費精算を実施するというJICAの契約制度上、年度末に近づくにつれて支出予定額が下方修正される傾向があった。このような事情を背景に、JICAでは年度当初の運営費交付金配分を一部抑制(予算担当部局が一律的に計画額から一律割り引いた予算を配分)し、例年7月ごろに予算を追加配分することが習慣化していた。また、中期目標期間の途中年度においては、60億から150億円の運営費交付金が前年度から繰り越されており、これらについても決算終了後の7月に追加配分されることが継続していた。
 平成28年度にJICAは第3期中長期目標期間の終了を迎えた。独立行政法人は中長期目標期間の終了の都度、執行しなかった運営費交付金(運営費交付金債務)を精算し、財政当局に認められたものを除き国庫に返納することとされており、JICAにおいては、平成28年度中に運営費交付金債務を積極的に執行した。この結果、平成29年度においては、前中期目標期間から繰り越される予算が発生しないこととなり例年より70~100億円程度下回る予算規模となったものの、JICAでは例年どおり、実費精算による支出予定額の下方修正や予算の追加配分、(平成29年度においては存在するはずのなかった)前年度からの繰越予算の配分を見越し、また、途上国における旺盛な開発ニーズに対応すべく、平成29年度当初より予算額を超えるペースで執行を開始した。

○発生事象
 JICAの財源のうち、国の予算に該当するものについては、一般勘定及び有償資金協力勘定から措置される。平成29年度においては、個別法に基づく運営費交付金として、一般勘定から1,503億円が交付された。JICAはこのうち事業費として例年並みの1,014億円を割り当てた。しかしながら、平成29年9月の段階で、予算に対して90%以上が契約済みとなる事態に至り、JICAにおいて組織的な執行抑制策が講じられることとなった。

○執行抑制策
  • 実施中の案件の後ろ倒し(115件、76億円の支出を後ろ倒し)
  • 平成29年度に開始が予定されていた案件の凍結(175件、28億円)
  • 翌年度に開始を予定していた案件の縮小(過去5年平均の33%まで件数を抑制)
 これらの結果、平成29年度のJICAの決算においては、運営費交付金全体予算の1,503億円に対し、予算執行額は1,458億円となり、支出額が予算額を超過する事態は回避された。

○反響
 平成29年度年央段階で、予算不足の見通しが顕在化したことにより、株式会社国際開発ジャーナル社や毎日新聞系列の雑誌媒体が取り上げ始めた。「サンデー毎日」が12月17日号で「国際協力機構 ”資金不足”に?-”受注60億円減る”-業界団体悲鳴」と報道したのが初出と見られている。「週刊エコノミスト」も「予算管理で異例の”不手際”-JICA見直し論も再燃か」として、これに続いている。
 業界専門誌、「国際開発ジャーナル」は平成30年3月の735号で「JICA資金ショートの実情 開発業界に広がる余波」と題して特集し、大々的に取り上げた。平成29年度秋ごろからの、JICAによる新規契約の取り消し・延期や既契約案件の支払猶予を契約相手先に依頼するなどの動向を紹介するとともに、JICAが開催した企業向け説明会の模様なども報じている。

○対応
 平成30年度に入り、支出額が予算額を超過する事態が回避された後、JICAは原因の究明と再発防止に着手した。まず、6月1日に「JICA運営費交付金予算執行管理問題への対応について」と題した対応方針を公表し、「予算執行管理室」の新設、理事会を通じたガバナンスの強化、情報システムの改善、「予算執行管理強化に関する諮問委員会」の設置などを発表した。同委員会は6月12日に初回の審議を開始している。
 あわせて、「現下の状況に至った責任」として、以下のような措置を講じている。
  • 理事長について給与の10%を3ヶ月自主返納
  • 副理事長について給与の10%を2ヶ月自主返納
  • 全理事8名について給与の10%を1ヶ月自主返納
  • 元上級審議役1名について給与の10%を1ヶ月自主返納
  • 関係理事及び部長の異動
 また、6月末には監事による監査報告や平成29年度の業務実績に関する自己評価(業務実績報告書)が主務大臣に報告された。監事3名の連名からなる監査報告では、JICAの業務について「概ね効果的かつ効率的に実施されたものと認める」、「内部統制システムに関する役員の職務の執行について、特段指摘すべき事項は認められない」とし、予算逼迫問題については、「調整努力を引き続き継続するとともに、必要な改善を着実に進めることが望まれる」との記述に留まっている。また、業務実績報告書におけるJICA自身による予算逼迫問題の評価は、改善の余地を認めつつ「契約相手先等関係者との間で一部混乱を招いた」との記述に留まっている。

○主務大臣等による指摘
 上記のJICAによる業務実績報告書に対し、主務大臣による評価がなされた。これに先立つ有識者への意見聴取では、予算逼迫問題に対し「「一部混乱を招いた」ではすまない深刻な事態と認識している」、「今後、二度と同じ問題を起こさないための分析と対策が見えてこない」、「初歩的なミスとの評価を受けることも免れない」、「日本の国際協力を支えている人びと、企業、団体に多大な運営上、経営上の損害を与えている」、「内外にわたって多くの人びと、企業、団体等が被害者になっていることを深く反省すべき」といった厳しい指摘が相次いだ。
 これを踏まえ、外務大臣として「外務省としても重く受け止めている」「抜本的な改善の取り組みを継続的に行う必要がある」として、「深刻な事態として受け止め、関係者への影響を最小限とすることに留意しつつ、予算執行管理体制の改革を含む再発防止策の策定・実施を通じて、事態の早期正常化」を実現させるよう指摘がなされた。

○原因究明と再発防止策
 JICAの「予算執行管理強化に関する諮問委員会」は、平成30年12月に最終報告書をまとめ、公表した。同報告書では、原因究明として以下のような検証を示している。

直接原因:
  1. JICAにおける「運営費交付金債務管理に係る理解の不足」(中期目標期間終了年度において運営費交付金債務の残さずに全額使い切るとの意識の作用、中期目標期間を跨いで繰越して平成29年度に執行すべき予算を平成28年度に別の使途で執行したことなど)
  2. 事前統制の緩みと面積管理の未定着(独立行政法人の裁量に基づき自律的に行うべき事前の統制の認識不足、複数年度にわたる案件と後年度の支出計画管理の未定着)
  3. 年度当初での抑制的配分と繰越予算の追加配分という運用(上述の追加配分の慣習化のほか、JICAの経理業務統合システムにおける運用(システムの統制機能を解除し、予算額を超える契約や支出を可能とした運用)、事業管理、経理等の複数のシステムごとに同一項目を入力することによる一元的な予算管理の阻害)
  4. 予算見積もりの変動を適切に把握し管理する意識の不足(過去の経験則に基づく予算管理)

根本原因:
  1. 担当役員や管理職における予算に対する管理意識の不十分さ
  2. 予算管理の動機付け(人事評価制度等)の不足
  3. 管理会計的なコントロールの不足

 また、同報告書では原因究明の結果を踏まえ、具体的な改善策として次のような提言を示している。
  1. 理事会審議を経て概算要求及び年度計画予算策定に反映する事前メカニズムの構築等の事前統制
  2. 柔軟な計画変更を前提としつつ適時・適切な予算執行管理の徹底
  3. 複数年度事業の後年度支出計画額の把握と管理
  4. 年度予算の執行管理の適正化
  5. 階層別の責任・成果の明確化など予算管理手法の確立
  6. 予算の執行状況の可視化と理事及び理事会の役割の明確化
  7. 資源配分メカニズムの強化と人材育成

→運営費交付金債務
→役員会/理事会/理事会議/役員会議

2018年11月28日水曜日

認可文書(独立行政法人)

 中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人から主務大臣に提出し、認可を受ける文書。独立行政法人通則法やこれに基づく政省令で認可を受けることが定められた独立行政法人固有のもの以外にも、会社法会社等と同様に、法人一般的な認可(免許類など)も含まれる場合がある。
 独立行政法人通則法及び独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する政令(平成12年政令第316号)に基づく、主務大臣の認可対象は以下のとおり。

○独立行政法人通則法で定められた認可文書
・業務方法書
・中期目標管理法人の中期計画
・国立研究開発法人の中長期計画
・行政執行法人の事業計画
・短期借入金
・不要財産の国庫納付(現物納付)
・民間等出資の払戻し
・重要な財産の譲渡又は担保

○独立行政法人通則法及び独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する政令で定められた認可文書
・不要財産の国庫納付に関する申請書
・不要財産の譲渡収入による国庫納付に関する申請書
・簿価超過額を国庫に納付しないことの認可に関する申請書

 これらについては、独立行政法人通則法及び独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する省令(平成27年総務省令第28号)に基づき、他の主務大臣への提出文書と同様、監事の調査対象として指定されている。

→承認文書
→届出文書
→認定文書
→通知文書
→提出文書
→報告文書
→擬似契約関係
→中期計画/中長期計画/事業計画
→業務方法書

承認文書(独立行政法人)

 中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人から主務大臣に提出し、承認を受ける文書。独立行政法人通則法及び独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する政令(平成12年政令第316号)に基づく、主務大臣の承認対象は以下のとおり。承認文書の代表例としては財務諸表が挙げられる。かつて、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構をめぐっては、主務省(当時)との対立の結果、3年にわたり、主務大臣による財務諸表の承認がなされない「不正常な状況」が生じ、参議院において内閣への警告決議がなされるに至っている。

○独立行政法人通則法で定められた承認文書
・役員等の損害賠償責任の免除
・財務諸表
・余剰金の使途(目的積立金)

○独立行政法人通則法及び独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する政令で定められた認可文書
・承認申請書等

 これらについては、独立行政法人の組織、運営及び管理にかかる共通的な事項に関する省令(平成27年総務省令第28号)に基づき、他の主務大臣への提出文書と同様、監事の調査対象として指定されている。

→認可文書
→届出文書
→認定文書
→通知文書
→提出文書
→報告文書
→独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況

2018年11月15日木曜日

独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況

 「独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況」とは、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(以下、「機構」という。)が平成20年2月に実施した機構本部の移転に関し、防衛省と機構の間で対立状態が生じた結果、3年間にわたり機構の財務諸表が主務大臣に承認されないなどの「不正常」が継続した事例。独立行政法人通則法に基づく主務大臣の是正要求が初めて発出された事例であり、参議院が「看過できない」として内閣に対する警告を議決するに至ったほか、平成26年の独立行政法人通則法改正にあたり独立行政法人に対する主務大臣の関与が強化されるなど、大きな影響を与えている。
 本件は、主務大臣や旧独立行政法人通則法における主務省の指導と独立行政法人の自主性・自立性の対立、「登記上の本社」を以って個別法で定める「主たる事務所」とすることの可否、独立行政法人が本社機能を分散配置することの効率性・非効率性、本社機能を東京都外へ移転させたことによる業務運営効率化目標達成への寄与など、独立行政法人制度に関する議論に加えて、「ねじれ国会」により個別法の改正が困難であったとする捉え方(機構側主張)や、本部移転から「不正常な状況」の解消までに政権交代をはさんだこと、当時不祥事が散見された防衛省を舞台としたことなど、周辺状況もあいまって、国会や新聞報道等でも大きく取り上げられた。
 また、機構理事長が元防衛装備庁長官であり、防衛省独立行政法人委員会で防衛省側と「激論」を交わす、不規則発言(オフレコ発言及びオフレコの撤回を含む)を繰り返すなどの言動が見られたことも、影響を大きくしたと見られる。防衛省独立行政法人委員会では、機構理事長について、「あの態度はあれが経営者の態度だろうかと思う」との感想が示されたほか、「明確に人事権を持っている大臣が発動してこの理事長を更迭しなければいけない」との発言がなされるなど、異例の経過をたどっている。
 最終的には、移転から3年後の平成23年2月、参議院が警告決議を発出するのに先立って、機構本部を東京都内に再移転するに至り、対立状態は解消している。


○経過
 参議院決算委員会や防衛省独立行政法人委員会、その他機構の監事監査報告書などで明らかにされている主な経緯は以下のとおり。

(前史)
 平成14年の4月に独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構法が施行され、機構の主たる事務所は「東京都内に置く」こととされた。防衛省その他府省等との連絡調整上の利便性から、本部の具体的な所在地として、港区愛宕が選定された、
 平成18年4月に施行が開始された「独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構中期目標」(第2期)にて、中期目標期間中15%の経費縮減を図るとする、業務運営効率化目標が設定された。同目標を達成するためには、物件費(平成17年度8億円)のうちおよそ4分の1を占めていた、港区愛宕の機構本部の移転が不可欠と考えられた。

(検討経過)
 機構において「本部の移転に関するプロジェクトチーム」が設置され、移転先の検討に着手した。当時の本部事務所(愛宕グリーンヒルズMORIタワー15階)の坪単価が約3万6千円であったのに対し、坪単価2万円前後等を軸に複数の不動産仲介業者を介して、100件以上の候補を検討したものの、「なかなか適当なものがなかった」として、検討対象を神奈川県東部まで拡大した結果、最終的には、江東区豊洲及び横浜市内の2物件まで絞り込んだととされる。
19年の2月には、機構の役員等会議にて、横浜を移転先とすることが決定されたが、この際には、「主たる事務所を東京都内に置く」とした機構法との適合は考慮されなかったとされる。平成20年7月に機構の企画調整部長が明らかにしたところによれば、当時の機構側における認識としては、
・「豊洲であれば法律改正しなくていいから、豊洲にすべきだという、そういう議論」はなかった。「我々としては法律が改正できないというのはないであろう、ましてや住所変更の話ですので、難しい話ではないだろうということを考えておりました」
・機構発足から5年近く業務を行ってきて、東京都内に置く必要はそれほど見受けられず、「むしろ運用してきて、横浜に行っても支障がないんだという判断があっ」た
といった楽観的なものであった。
 上記役員等会議からまもなく、機構は、平成19年度の年度計画において「平成20年度に本部事務所を移転するため、必要な準備を行う」とし、防衛大臣に届け出ている。また、防衛省地方協力局労務管理課によれば、3月の時点で横浜市の物件について、機構から賃貸借契約を申し入れたと見られている。

(法改正の断念・賃貸借契約の締結まで)
 横浜移転に関する主務省への説明は、平成19年度開始直後より行われた。4月4日には、機構から防衛装備庁(当時)に対して、本部移転の希望と、機構法における所在地規定の改正の要望を伝達した。しかしながら、7月12日には防衛省から機構に対し、「機構法の立法時の考え方に照らして改正は行えない」旨が通告された。その後、防衛省と機構の間で、移転と機構の改正について、双方の幹部を交え累次の調整が続けられた。
 機構側は、4月から7月の時点で、防衛省との間で具体的な改正作業についてやり取りがなされたことを受けて、「法律改正の報告で事務レベルで進んで」いたと認識していたと主張している。このため、7月の防衛省からの通告は一方的であると捉える立場に立った。他方、防衛省側では、府省等との連絡調整の観点、加えて「安価な賃貸借の物件が東京都内で」見つかる可能性が高く、「実際に不動産業者に照会しても現にありました」として法改正の必要性はないとの認識を持っていた。
 その後、機構において、東京都内の物件について再検討がなされたものの、具体的な選定に至らないまま、9月末日には当時の機構本部の不動産契約の更新申し入れ期限を迎えた。この時点で、機構が更新の申し入れを行わなかったことから、愛宕からの本部移転が確定することとなった。その後、11月30日には防衛省との調整未了の状態で、横浜市の物件について賃貸借契約を締結した。

(対立)
 12月4日には、防衛事務次官から機構理事長へ電話があり、「主務大臣の判断により機構法は改正しない」旨、伝達があったとされる。さらに、この電話を受けて、機構理事長が2度防衛大臣と会談をしたものの、防衛大臣は「まあ、わかっている、国会がねじれているからできないんだ」と回答したと、機構理事長は主張している。機構側はこれを以って、7月以降の防衛省側の主張とは別に「政治判断」(機構理事長の主張)があって、法改正が行えないと捉えたと見られる。なお、機構法改正の要否に関して防衛大臣の関与があったか、否かについては、後日防衛省独立行政法人評価委員会等で取り上げられるものの、防衛省側は「ちょっとそれに反応するのは差し控えたいと思います」として、肯定も否定もしていない。
 12月10日には、防衛省から移転について再考を促す旨の文書が発出され、以後、12月21日及び移転直前の翌年2月8日にも同様の文書を発出されるが、双方の歩み寄りはなされなかった。さらに、この間に決定された「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月24日閣議決定)では、「賃貸料の1億円の削減を図るため、平成19年度中に本部事務所を移転する」旨が示された。機構は、「独立行政法人整理合理化計画」を受けて、当初20年度に予定していた移転を前倒すこととしたと主張している。

(本部移転)
 明けて平成20年2月12日には、機構が本部事務所を大田区蒲田(若干名の監事等の機能)と横浜市(理事長以下の事実上の本部機能)に移転させた。蒲田の事務所を本社として登記することにより、登記上は東京都内に本社を置いた状態で、実質的に横浜に移転した形となる。
 移転後から年度末にかけて機構の監事による「平成19年度監事監査(臨時監査)」の結果がまとめられた。監事監査結果は、おおむね機構側の主張を肯定しつつ、「防衛省と機構が対立するのではなく、常に国民的視点に立ち、一致協力して機構目的の業務に関する行政サービスの向上に努めるよう、監事として強く要望する」とし、対立状態に陥ることへの懸念を示している。

(不正常化)
 3月以降、平成19年度業務実績の評価や決算・財務諸表の提出等が開始されるにつれ、移転を契機とした「不正常な状態」が現実化した。独立行政法人通則法においては、独立行政法人は6月末までに財務諸表を主務大臣へ提出し、承認を受けることとされているが、機構の平成19年度決算に係る財務諸表については、「移転に伴う経費がこの財務諸表に含まれている」として、承認が留保された。さらに、防衛省独立行政法人評価委員会にて平成19年度における業務実績評価が開始されたことにより、防衛省と機構は、同委員会でも「激論」を交わすようになる。
 まず、3月26日に開催された第5回防衛省独立行政法人委員会では、機構の企画調整部長より、機構法第5条の「主たる事務所を東京都に置く」との規定を改正するよう防衛省に依頼していること、及び法改正の暁には、本部機能を横浜に一元化する旨の説明がなされた。特にこの段階では防衛省の見解は示されず、「委員会としては事実をご報告いただいたということだけにとどめておきたい」とされた。
 5月16日には、機構から防衛省側に東京都昭島市に登記上の本社を移転する提案がなされたものの、これは登記上の本社移転(機構法との適合のために設置した蒲田の事務所を昭島に移転させる)との趣旨と解されたことから、防衛省はこれを認めないこととなった。
 続く7月2日の第6回委員会では、防衛省側より、府省等との連絡調整など立法趣旨に照らして本部については東京に設置することが適切としてきた、防衛省としては移転半年前の7月から十分な説明を行ってきた、等の説明がなされた。これに対し、出席していた機構理事長からは、法改正を行わない具体的な理由等が明らかにされていない、という不満が表明された。理事長は防衛省側に対して、「考え方を君は完全に間違えている」「今の答えはおかしいんだ、君(防衛省側の課長)は。文書で書いて答えてこい」「そんな変な話するんじゃなくて、今の状況において物を言いたまえ。大臣から宿題おりているだろう。」等の発言を行っている。この理事長の発言について、一部委員からは「あの人が怒ってる気持もよくわかる」としつつ、「あの態度はあれが経営者の態度だろうかと思う」と評されている。
 第6回委員会ののち、7月11日には、防衛省地方協力局長から理事長宛に「機構法との5条との関係で改善案を作成して提出するよう」要請がなされたものの、機構からは、7月17日に理事長から防衛大臣宛として、「法改正がされるまでの間、引き続き大田区の事務所と横浜の
事務所と一体として本部の業務を行う」「昭島市に事務所を設置する案についても引き続き検討する」との回答がなされた。
 7月30日の第7回委員会では、委員から、機構法5条と実質的な横浜移転との関係について「違法」とする見解が示されたほか、別の委員からは、「明確に人事権を持っている大臣が発動してこの理事長を更迭しなければいけない」との発言が見られた。他方で、過半数にあたる3名の委員が「賃借料の大幅な削減がなされた」ことを顕著な実績とする評価や、「機構が何をするかと考えたときに、例えば米軍の基地等で働いていらっしゃる方々の労務管理であると考えれば、これは個人的見解でございますが、横浜にその本部事務所があることは、私はむしろプラスなのではなかろうか」との意見も見られ、委員会においても判断が分かれた。さらに、委員会は防衛省関係者を会場から退席させた上で、機構から直接ヒアリングをおこなうなど、極めて異例の展開となった。
 最終的に、防衛省独立行政法人評価委員会は、「当委員会としては、機構法の枠内で業務を行うことが機構側の責務であり、機構役員会の決定等が国との関係において円滑になされていないと判断し」た、との評価を残している。

(主務大臣からの是正措置要求)
 独立行政法人評価委員会における判断などを踏まえ、9月16日には、防衛大臣から機構に対し、是正措置要求が発出された。これは、独立行政法人制度史上初めての事例にあたる。この是正措置要求などを契機として、10月14日には、機構理事長から防衛大臣に対して、登記上の本部の状態であった、大田区蒲田に理事長自身が常駐する意向が表明されたものの、実質的に横浜市で本部業務を実施する状態については解消に至らなかった。
 上記の経過を踏まえ、11月26日には総務省政策評価・独立行政法人評価委員会が防衛省独立行政法人評価委員会に対し、「今後の評価に当たっては、事務所の移転に関し、防衛大臣から本法人に対し是正要求が出されるに至った経緯及び対応状況を踏まえ、神奈川県横浜市に新たな事務所を設置した理由を明らかにした上で、評価すべき」との意見を表示した。政策評価・独立行政法人評価委員会はその後も、機構役員の退職金算定の機会に際して、「通則法第65 条第1項に基づき主務大臣から是正要求がこれまで発出された例はなく、同項に基づく是正要求が発出された事実は重く受け止めざるを得ない」との認識を示している。

(経営の責任、大臣の関与(オフレコ発言)等の検証)
 平成21年3月12日には、是正措置要求や政策評価・独立行政法人評価委員会による意見を踏まえ、役員(理事及び監事)の退職金再算定を含む再検討が第9回防衛省独立行政法人評価委員会でなされた。この中では、事務所移転を担当した理事及び監査において機構側に肯定的な監査結果を残した監事について、特に責任(独立行政法人の監事が経営と連帯して責任を負うか、否か、等)の観点で議論がなされた。しかしながら、不利な取り扱いを受けた役員個人から訴訟がなされた場合の各委員の責任(行政訴訟であれば防衛大臣が負うが、民事訴訟であれば委員個人も責任負うのではないか、等)が明瞭でなく、結論を下すことへの慎重論が相次いだことから、全委員総意により、継続審議されることとなった。
 なお、この時点で防衛省側は、「本当に違法であると断定することが最も重要なのではなくて、違法性のおそれがあるという事態に至ったプロセス全体に問題がある」として、事務所移転が違法だったのか、否かの断定を避けている。
 7月3日には、第10回委員会が開催され、約1年ぶりに機構理事長が委員会に出席した。理事長は「記録はとらないでください」(後に撤回)と前置きした上で、問題のきっかけである、機構法第5条の改正可否について主務大臣に問い合わせたところ、「国会がねじれているからできない」との返答が帰ってきた旨、明らかにした。さらに、前回委員会で継続審議となった理事及び監事の退職金算定について早期に結論を示すよう求める「不規則な発言」(委員長)なども見られた。同委員会において、防衛省及び機構から、「東京都内」への事務所再移転として、昭島市(横田)への移転を検討している旨も明らかにされた。
 理事及び監事の退職金算定については、同29日の第11回委員会にて取り上げられ、「国と機構が深刻に対立し、異例とも言える是正措置要求が発出された事実」を認定しつつ、「他方で、会計検査院や国会との関係では取り上げられていないこと、社会的な影響も限定的であること」を踏まえ、「移転によって経費の抑制が図られ、「機構の中期目標」との関係では評価できる」として、大きく退職金を減算するまでとは言えないとの結論に至った。この結論については、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会へ回付され、同分科会においても「総合的に勘案すれば、機構の業績が良好でないとまではいえない」とした上で、早期収束を求めた。

(国会質疑から収束へ)
 上記のとおり、「国会との関係では取り上げられていないこと」なども踏まえつつ、独立行政法人評価における結論が導かれたが、翌平成22年には、その国会で、防衛省と機構との対立状態を原因とする財務諸表の承認見合わせなどが取り上げられた。平成22年4月12日の参議院決算委員会では、「法律に書いてある本部を勝手に大臣の許可も得ないで、それも二か所に分けて本部を移転した」件について、野党から質問がなされた。これに対し、防衛副大臣より「大変遺憾である」「私どもからいたしますと、法的には違法状態は解消しているとしているんですが、我々からいたしますと、どうもこれは腑に落ちない、へ理屈ではないかと」との答弁がなされた。他方、問題の発生(平成19年度)から国会で取り上げられる(平成22年度)までの間に政権交代を挟んだこともあり、「おれたちさんざん部屋汚しておいたけど、あんたたち後からしっかりきれいにしろよと言っておる」(防衛大臣)、「私たちが重い荷物をしょわされたわけでありますから、(略)、是非ひとつ、前政権にあられた方々もこういう御指摘をする以上は防衛省に対する真摯な御忠告をお願いを申し上げる次第であります」(同)と、機構との対立関係を、政権交代前の「汚れ」や「荷物」に例える答弁も見られた。国会質疑から程なくして、同21日には、東京新聞が朝刊で「二重本部」、「家賃の二重払い」として、この問題を取り上げられている。
 国会質疑や新聞報道により取り上げられたことは、防衛省独立行政法人評価委員会にも「もうちょっとシリアスに受けとめるようなことのほうがよろしいのかな」(委員)と少なからぬ影響を与えることとなった。8月2日の第15回委員会では、移転当時の理事長(平成21年3月末退任)の退職金算定について取り上げられたが、理事長の業績については「順調に実施ということはまず無理」「新理事長の体制のもとで速やかに是正要求をきちっと履行すべき」といった評価がなされた。委員会の場では、防衛省側から、「今年度中に本部事務所問題についての一定の決着がつけられるように努力していきたい」との意思表示も見られた。政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会も同様に、「防衛省が法改正は行わない旨を再三通知又は連絡していたにもかかわらず、理事長自らが現に本部事務所の移転に関与し、及びこれを決定した責任は極めて重い」と断定した。
 上記のとおり、機構側、特に理事長の責任が取り上げられるに至り、また、実質的な本部機能を担ってきた横浜の事務所の賃貸契約が納期を迎えたことなどから、平成23年2月14日には機構本部の東京都港区への再移転・集約がなされた。これを受けて、同日、防衛大臣が参議院決算委員会にて「財務諸表につきましても承認手続を進めたい」旨を表明した。3年にわたる「不正常な状況」の解消が得られた後となるが、2月16日には、参議院本会議にて以下の警告決議が示されている。
 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構は、主たる事務所を東京都に置くことが法律で定められているにもかかわらず、本部の実質的機能を他県へ移転し、そのため独立行政法人通則法において毎年度大臣の承認を受けることとされている財務諸表も、平成十九年度以降承認されていない不正常な状況が継続していることは、看過できない。
 政府は、同機構に対し、法令違反の疑義ある状態を早急に是正し、業務の効率化を図るよう、指導を徹底すべきである。
本警告決議を踏まえ、2月25日には、平成19、20、21各事業年度の財務諸表が主務大臣に承認され、一連の「不正常な状況」は解消した。

○影響
 本件は独立行政法人として初となる、主務大臣からの是正要求がはじめて発出されたが、正常化に至るまで2年半近くを要した。このため、内閣官房独立行政法人改革に関する有識者懇談会においても、「主務大臣の意思決定が政策実施等に反映されにくい」問題事例として取り上げられ、後の独立行政法人改革における主務大臣の関与の強化(主務大臣による評価、是正要求に代わる是正「命令」等の導入)に影響を与えたと言える。


○論点
 国会、各府省審議会、府省、機構等の間で取り上げられた点としては以下のとおり。

◎機構法において東京都内に主たる事務所を置くとされているところ、登記上の本社を蒲田に、実質上の本部を横浜に移転させたことが違法状態か、否か。

  • 形式的に蒲田を本社として登記したことで違法状態を回避した(機構-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 事務所を並存させている状況は、機構が機構法第5条に抵触しないようにするためのもの(監事-監事監査報告書)
  • 本当に違法であると断定することが最も重要なのではなくて、違法性のおそれがあるという事態に至ったプロセス全体に問題がある(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 法律に違反して平成20年2月に事務所を東京都から神奈川県に移転した(内閣官房行政改革推進本部事務局ー独立行政法人改革に関する有識者懇談会での説明)
  • 違法状態は解消している(防衛副大臣ー国会答弁)
  • 法令違反の疑義ある状態(参議院ー警告決議)



◎業務運営効率化目標の達成のため、本社の実質的移転を行ったことの評価

  • 中期計画に定める経費抑制の観点からも已むを得ない処置であると思慮している(監事-監事監査報告書)
  • 年間賃借料約1億円を削減。また、東京23区と横浜市との地域手当の差により人件費も約3,000万円を削減見込みにあることなどを総合的に勘案すると、機構の業績が良好でないとまではいえない(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会-役員退職金に係る業績勘案に関連して)



◎機構法の本社所在地に関する規定を改正することの是非、妥当性。また、法律改正を提案する立場にある主務大臣の判断の妥当性

  • どこで労務管理業務を行うのが便利なのか、利便性が高いのかというのはまさに運用主体である機構そのものが判断すること(機構-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 主務大臣からは、「国会がねじれている」から法律改正ができない、と説明を受けておりこれは高度な政治判断であると理解(理事長-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 国民的理解を得るためには、機構法第5条を改正するのが、現状の問題を継続させない唯一の方法であると判断している(監事-監事監査報告書)
  • 機構法立法時の趣旨である、府省との連絡調整という観点で、本部事務所は東京都内に置くとする規定は変更しない(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • (防衛大臣が「ねじれ国会」を理由に機構法改正を拒否したか、否かについては)ちょっとそれに反応するのは差し控えたいと思います(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • この監査報告を普通の国民が読んだらね、どうして変えなかったんですかと。何に固執しているんですかということになるんですよ。経費が削減されて何か問題があるんですかと、横浜に行って。何で本省が法律を改正してこういう効率が図れるようにやらなかったんですかという問いの方がはるかに説得力がある(防衛省独立行政法人評価委員会の一部委員)
  • 法案の話ですからいろいろな流れがあって難しかったというのも何となく想像の範囲内ですけれども、しているんですけれども、むしろ、それなら法案を改正すればいいことだらけのところを何で改正しなかったのか。(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員)
  • ともかく、大変高度なレベルで、我々から考えれば東京から移転すればいいじゃないかという、法律改正をしてもらえば、全部みんなハッピーだったのにもかかわらず、高度なレベルの判断で法律の国会提出はできないということだった(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員、前出とは別)

※平成19年12月には、「独立行政法人整理合理化計画」により、「賃貸料の1億円の削減を図るため、平成19年度中に本部事務所を移転する」旨が示されたが、当初平成20年度を予定していた移転について防衛省と機構側で平行線となっていた状態にありながら、当該移転を加速させる閣議決定に防衛大臣が賛同した理由等については、現時点では不明であり、解明を待たなければならない。
※当時、機構役職員に占める防衛省からの出向者は、移転当時に45.4%、平成21年度には49.4%と半数近くを占めるなど、他の法人と比較してもきわめて異例の水準にある、と言える。役職員のほぼ半数が主務省を母体とする健全性・妥当性については別の議論とするにせよ、ここまで人的交流が濃密な中で、3年近く主務省と独立行政法人が対立関係にあったということ自体が注目に値すると考えられる。


○その他(関係者等の発言)

  • あの態度(理事長の発言)はあれが経営者の態度だろうかと思う(防衛省独立行政法人評価委員会の一部委員)
  • 忠臣蔵ではありませんけれども、実質をとるか形式をとるかということで大変悩みました(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員)
  • 実質的に、これだけ1億円とか3,000万円削減だというのも、事務局に精力的に仮定計算をしてもらって、こんなにいいことをしたんだというのも、このワーキングの事務局に宿題を出して、みんな一生懸命やってくださった成果でございます。そういう点では本当によかったんですけれども、ともかくその前に法律改正できないと言ったにもかかわらず実行した。さらに、形式を整えるために蒲田を借りた。ただ、蒲田の方は200万円ぐらいしか経済的には損失してないけれども、そこでいいじゃないかとまた開き直ったというか、そういうことなので、悩みましたけれども(同上)
  • 我々も相当細かく府省の評価委員会などの議事録の、各個々人の発言を聞きながら、なかなか表現は難しいんですが、独法と主務省との間での人間関係の中で、天下りの問題も絡むのかもしれませんが、いろいろな議論がありました。そういうことを勘案してでも、やはり独法評価委員としてはルールを守るということが重要であり手順を守ることが重要であるということに重点を置いて一度差し戻しました。私どもも苦渋の議論を重ねて差し戻したということを付け加えさせていただきます。(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員、前出とは別)


→独立行政法人の自主性
→業務運営効率化目標
→独立行政法人の役員
→役員会/理事会/理事会議/役員会議

2018年11月12日月曜日

業務方法書

 独立行政法人における業務の実施方法の要領を規定する文書。独立行政法人の設置及び業務開始に際して制定する。

○起源
 独立行政法人制度の骨格を決定した「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)において、「業務方法書には、業務の方法に関する事項のほか、業務の委託に関する基準、競争入札等の契約に関する基本的な事項等について定めることとする」こととされた。

○記載内容
 業務方法書に記載すべき内容については以下のとおり規定等が設けられている。
  1. 独立行政法人通則法において定められる記載事項(役員等の損害賠償責任における減免額(総務大臣が定める額※を上限とする))
  2. 独立行政法人ごとの主務省令において定められる記載事項
  3. 「中央省庁等改革の推進に関する方針」において示された「業務の方法に関する事項」、「業務の委託に関する基準」、「競争入札等の契約に関する基本的な事項」
  4. 「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第322号)において示された内部統制システムに関する記載事項の例示

 上記のうち、「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」に関連する記載事項については、「業務方法書(独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備)の記載一例」(平成27年2月27日総務省行政管理局作成)により、総務省行政管理局より記載内容の例示が示されている。
※独立行政法人通則法第25条の2第4項の規定に基づき総務大臣が定める額等を定める件(平成27年3月30日総務大臣告示第116号)

○忠実義務
 独立行政法人通則法において、独立行政法人の役員は、業務方法書等を遵守する義務が課されている。

○制定・変更プロセス
 独立行政法人において制定した後、主務大臣の認可を受けなければならない。変更する際も同様とされる。
 平成27年の改正独立行政法人通則法施行以前は、認可に先立って独立行政法人評価委員会の意見を聴取することとされていた。このプロセスは改正独立行政法人通則法により廃止されている。

→独立行政法人の内部統制システム
→「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第322号)
→「業務方法書(独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備)の記載一例」(平成27年2月27日総務省行政管理局作成)

2018年10月4日木曜日

監事監査費用

 「独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について」(平成28年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)では、監事の職務遂行のための「監査に要する費用」の確保が求められる。監事監査費用には、「実地監査に要する出張旅費」、「外部専門家の意見聴取に要する費用」、「監査に必要な書籍の購入費用」などが含まれる。
→
「独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について」(平成28年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)

2018年10月2日火曜日

独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)

 「独立行政法人の監事の機能強化等に伴う措置について」(平成26年11月28日総務省行政管理局長)(総管査第321号)は、平成26年に総務省行政管理局長から各府省大臣官房長宛に発出したもの。「独立行政法人等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)に基づき、「独立行政法人を所管する主務大臣において措置すべき事項」を通知している。
 主な「措置すべき事項」は以下のとおり。

  1. 監事向けの研修・啓発への参加促進
  2. 主務大臣と監事との定期的な意見交換の実施
  3. 監事を補佐する体制の整備
  4. その他監事の機能の実効性を向上させるための措置(監査費用の確保等)

本文: