◯起源
平成24年、当時の民主党政権下において、会社法の規定を参考とし、独立行政法人においても役員の損害賠償責任を規定する、独立行政法人通則法の改正が試みられた。同改正法案は廃案となったものの、政権交代を挟んだ平成25年、改めて独立行政法人改革の検討が進めることとされ、役員の損害賠償責任についても、自民党政権における検討に継承された。
この流れを踏まえ、内閣官房の「独立行政法人改革に関する有識者懇談会」では「役員に職務忠実義務及び任務懈怠に対する損害賠償責任を課し、業務運営上の義務と責任を明確化する」旨を提言し、独立行政法人通則法改正案においてもその旨が盛り込まれた。
◯役員賠償責任保険の導入
独立行政法人通則法改正後、会社法会社において先行事例のある、役員賠償責任保険の導入が見られている。役員賠償責任保険については、当事者(役員)個人が加入するケースと組織的に加入(会社又は独立行政法人による一部又は全額負担)するケースのいずれかが考えられる。
後者のケースについては、役員が損害賠償責任に萎縮し経営判断の積極性を欠くことを回避する観点での導入が考えられ、少なくとも会社法会社に関しては、会社による全額負担も適法とする解釈(経済産業省コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会)が見られている。独立行政法人においても、少なくとも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機や独立行政法人国立病院機構において組織的な加入事例が見られている。
◯免責
独立行政法人通則法においては、主務大臣の承認による免責規定のほか、役員が「善意でかつ重大な過失がない場合」において、以下のような算定方式から算定される値を限度に免除を可能とする規定が設けられている。この規定を適用する場合は、予め業務方法書においてその旨を明記しておくことが要件となる。
免責額の限度=賠償責任額-最低責任限度額
最低責任限度額(役員が最低でも負うべき賠償の額)=年間報酬相当額×係数
最低責任限度額(役員が最低でも負うべき賠償の額)=年間報酬相当額×係数
最低責任限度額の算定に係る係数については、独立行政法人通則法第25条の2第4項の規定に基づき総務大臣が定める額等を定める件(平成27年3月30日総務省告示第116号)により、役員の年間報酬相当額(退職手当の年換算を含む)に、代表権を有する役員は6倍、監事については2倍、その他の役員については4倍とされている。
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