法改正では、研究開発法人が、その研究成果を用いて事業を行う「成果活用事業者」や民間移転・共同研究開発等の企画及びあっせん等を行う「成果活用等支援法人」に対して出資を行う余地が拡大した。他方で、研究開発法人が独立行政法人として業務・財務の健全性を維持しつつ、出資等の業務を実施するうえで、留意すべき事項や組織体制等の対応事項について定める必要性が認められたため、ガイドラインを定めることとなった。ガイドラインの概要は以下のとおり。
○出資の対象
ガイドラインでは、出資の対象を「研究開発法人発ベンチャー(成果活用事業者)」、「研究開発法人発ベンチャーに対して助言・資金供給等を行うベンチャーキャピタル又はファンド」、「成果活用等支援法人」の3つに整理している。
○出資財産
各研究開発法人の自己収入をその原資とすることを基本としている。なお、自己収入としてガイドラインが掲げているのは、寄付金、特許料収入、受託収入などであり、国民負担に帰さない収益としている。
○現物出資
現物出資を行う場合には、研究開発法人が所有する知的財産及び設備等が想定されるとしつつ、その際も補助金適正化法との整合、出資先が倒産・休眠状態に陥った場合に備えて知的財産の返還を予定する条項の整備などを求めている。
○人的・技術的援助
具体的な想定として、研究開発法人の研究者等による助言等の支援、研究開発成果の実用化等に精通した専門人材の紹介、ベンチャーキャピタルや民間金融機関等と連携した研究開発法人ベンチャーへの経営人材の紹介などを掲げている。
○体制整備等の必要な措置
出資等に係る専門性と客観性を担保するため、次のような項目に関する規程を整備しなければならない、としている。
- 外部有識者の委員会による審議
- 出資業務に関する管理者及び担当部署の設置
- 出資先の選定に当たっての具体的な審査項目(事業計画、財務内容、経営体制・技術的能力等)
- 出資後の状況把握及び対応
- 利益相反マネジメント
- 民間ベンチャーキャピタル等との連携
○大臣認可事項
成果活用事業者以外への出資等については、研究開発法人の本来機能の一部を外部に実施させるものであるとして、主務大臣の認可及び財務大臣への協議を行うとしている。
○中(長)期目標等への反映
国立研究開発法人の場合は中長期目標及び中長期計画、国立研究開発法人以外の研究開発法人については中期目標及び中期計画にて出資の方針や体制、達成すべき成果を定める必要があるとしている。このため、主務大臣による独立行政法人評価においても、出資等の成果が評価されると考えられる。なお、業務方法書についても同様の内容を記載することとしている。
○関係規制等遵守
独立行政法人通則法や独立行政法人会計基準、金融商品取引法におけるインサイダー取引規制、反社会勢力との関係不保持などに万全を期すよう求めている。
○府省への報告
研究開発法人は所管府省に対し、出資内容や出資決定プロセス、背景、回収見込みなどを適時適切に報告し、密に連携するよう求めている。
→研究開発法人
→国立研究開発法人
→「国立研究開発法人」以外の「研究開発法人」
→中期目標/中長期目標/年度目標
→中期計画/中長期計画/事業計画
→業務方法書
→認可文書(独立行政法人)
→提出文書(独立行政法人)
本文:
「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局)
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