2018年11月15日木曜日

独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況

 「独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況」とは、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(以下、「機構」という。)が平成20年2月に実施した機構本部の移転に関し、防衛省と機構の間で対立状態が生じた結果、3年間にわたり機構の財務諸表が主務大臣に承認されないなどの「不正常」が継続した事例。独立行政法人通則法に基づく主務大臣の是正要求が初めて発出された事例であり、参議院が「看過できない」として内閣に対する警告を議決するに至ったほか、平成26年の独立行政法人通則法改正にあたり独立行政法人に対する主務大臣の関与が強化されるなど、大きな影響を与えている。
 本件は、主務大臣や旧独立行政法人通則法における主務省の指導と独立行政法人の自主性・自立性の対立、「登記上の本社」を以って個別法で定める「主たる事務所」とすることの可否、独立行政法人が本社機能を分散配置することの効率性・非効率性、本社機能を東京都外へ移転させたことによる業務運営効率化目標達成への寄与など、独立行政法人制度に関する議論に加えて、「ねじれ国会」により個別法の改正が困難であったとする捉え方(機構側主張)や、本部移転から「不正常な状況」の解消までに政権交代をはさんだこと、当時不祥事が散見された防衛省を舞台としたことなど、周辺状況もあいまって、国会や新聞報道等でも大きく取り上げられた。
 また、機構理事長が元防衛装備庁長官であり、防衛省独立行政法人委員会で防衛省側と「激論」を交わす、不規則発言(オフレコ発言及びオフレコの撤回を含む)を繰り返すなどの言動が見られたことも、影響を大きくしたと見られる。防衛省独立行政法人委員会では、機構理事長について、「あの態度はあれが経営者の態度だろうかと思う」との感想が示されたほか、「明確に人事権を持っている大臣が発動してこの理事長を更迭しなければいけない」との発言がなされるなど、異例の経過をたどっている。
 最終的には、移転から3年後の平成23年2月、参議院が警告決議を発出するのに先立って、機構本部を東京都内に再移転するに至り、対立状態は解消している。


○経過
 参議院決算委員会や防衛省独立行政法人委員会、その他機構の監事監査報告書などで明らかにされている主な経緯は以下のとおり。

(前史)
 平成14年の4月に独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構法が施行され、機構の主たる事務所は「東京都内に置く」こととされた。防衛省その他府省等との連絡調整上の利便性から、本部の具体的な所在地として、港区愛宕が選定された、
 平成18年4月に施行が開始された「独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構中期目標」(第2期)にて、中期目標期間中15%の経費縮減を図るとする、業務運営効率化目標が設定された。同目標を達成するためには、物件費(平成17年度8億円)のうちおよそ4分の1を占めていた、港区愛宕の機構本部の移転が不可欠と考えられた。

(検討経過)
 機構において「本部の移転に関するプロジェクトチーム」が設置され、移転先の検討に着手した。当時の本部事務所(愛宕グリーンヒルズMORIタワー15階)の坪単価が約3万6千円であったのに対し、坪単価2万円前後等を軸に複数の不動産仲介業者を介して、100件以上の候補を検討したものの、「なかなか適当なものがなかった」として、検討対象を神奈川県東部まで拡大した結果、最終的には、江東区豊洲及び横浜市内の2物件まで絞り込んだととされる。
19年の2月には、機構の役員等会議にて、横浜を移転先とすることが決定されたが、この際には、「主たる事務所を東京都内に置く」とした機構法との適合は考慮されなかったとされる。平成20年7月に機構の企画調整部長が明らかにしたところによれば、当時の機構側における認識としては、
・「豊洲であれば法律改正しなくていいから、豊洲にすべきだという、そういう議論」はなかった。「我々としては法律が改正できないというのはないであろう、ましてや住所変更の話ですので、難しい話ではないだろうということを考えておりました」
・機構発足から5年近く業務を行ってきて、東京都内に置く必要はそれほど見受けられず、「むしろ運用してきて、横浜に行っても支障がないんだという判断があっ」た
といった楽観的なものであった。
 上記役員等会議からまもなく、機構は、平成19年度の年度計画において「平成20年度に本部事務所を移転するため、必要な準備を行う」とし、防衛大臣に届け出ている。また、防衛省地方協力局労務管理課によれば、3月の時点で横浜市の物件について、機構から賃貸借契約を申し入れたと見られている。

(法改正の断念・賃貸借契約の締結まで)
 横浜移転に関する主務省への説明は、平成19年度開始直後より行われた。4月4日には、機構から防衛装備庁(当時)に対して、本部移転の希望と、機構法における所在地規定の改正の要望を伝達した。しかしながら、7月12日には防衛省から機構に対し、「機構法の立法時の考え方に照らして改正は行えない」旨が通告された。その後、防衛省と機構の間で、移転と機構の改正について、双方の幹部を交え累次の調整が続けられた。
 機構側は、4月から7月の時点で、防衛省との間で具体的な改正作業についてやり取りがなされたことを受けて、「法律改正の報告で事務レベルで進んで」いたと認識していたと主張している。このため、7月の防衛省からの通告は一方的であると捉える立場に立った。他方、防衛省側では、府省等との連絡調整の観点、加えて「安価な賃貸借の物件が東京都内で」見つかる可能性が高く、「実際に不動産業者に照会しても現にありました」として法改正の必要性はないとの認識を持っていた。
 その後、機構において、東京都内の物件について再検討がなされたものの、具体的な選定に至らないまま、9月末日には当時の機構本部の不動産契約の更新申し入れ期限を迎えた。この時点で、機構が更新の申し入れを行わなかったことから、愛宕からの本部移転が確定することとなった。その後、11月30日には防衛省との調整未了の状態で、横浜市の物件について賃貸借契約を締結した。

(対立)
 12月4日には、防衛事務次官から機構理事長へ電話があり、「主務大臣の判断により機構法は改正しない」旨、伝達があったとされる。さらに、この電話を受けて、機構理事長が2度防衛大臣と会談をしたものの、防衛大臣は「まあ、わかっている、国会がねじれているからできないんだ」と回答したと、機構理事長は主張している。機構側はこれを以って、7月以降の防衛省側の主張とは別に「政治判断」(機構理事長の主張)があって、法改正が行えないと捉えたと見られる。なお、機構法改正の要否に関して防衛大臣の関与があったか、否かについては、後日防衛省独立行政法人評価委員会等で取り上げられるものの、防衛省側は「ちょっとそれに反応するのは差し控えたいと思います」として、肯定も否定もしていない。
 12月10日には、防衛省から移転について再考を促す旨の文書が発出され、以後、12月21日及び移転直前の翌年2月8日にも同様の文書を発出されるが、双方の歩み寄りはなされなかった。さらに、この間に決定された「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月24日閣議決定)では、「賃貸料の1億円の削減を図るため、平成19年度中に本部事務所を移転する」旨が示された。機構は、「独立行政法人整理合理化計画」を受けて、当初20年度に予定していた移転を前倒すこととしたと主張している。

(本部移転)
 明けて平成20年2月12日には、機構が本部事務所を大田区蒲田(若干名の監事等の機能)と横浜市(理事長以下の事実上の本部機能)に移転させた。蒲田の事務所を本社として登記することにより、登記上は東京都内に本社を置いた状態で、実質的に横浜に移転した形となる。
 移転後から年度末にかけて機構の監事による「平成19年度監事監査(臨時監査)」の結果がまとめられた。監事監査結果は、おおむね機構側の主張を肯定しつつ、「防衛省と機構が対立するのではなく、常に国民的視点に立ち、一致協力して機構目的の業務に関する行政サービスの向上に努めるよう、監事として強く要望する」とし、対立状態に陥ることへの懸念を示している。

(不正常化)
 3月以降、平成19年度業務実績の評価や決算・財務諸表の提出等が開始されるにつれ、移転を契機とした「不正常な状態」が現実化した。独立行政法人通則法においては、独立行政法人は6月末までに財務諸表を主務大臣へ提出し、承認を受けることとされているが、機構の平成19年度決算に係る財務諸表については、「移転に伴う経費がこの財務諸表に含まれている」として、承認が留保された。さらに、防衛省独立行政法人評価委員会にて平成19年度における業務実績評価が開始されたことにより、防衛省と機構は、同委員会でも「激論」を交わすようになる。
 まず、3月26日に開催された第5回防衛省独立行政法人委員会では、機構の企画調整部長より、機構法第5条の「主たる事務所を東京都に置く」との規定を改正するよう防衛省に依頼していること、及び法改正の暁には、本部機能を横浜に一元化する旨の説明がなされた。特にこの段階では防衛省の見解は示されず、「委員会としては事実をご報告いただいたということだけにとどめておきたい」とされた。
 5月16日には、機構から防衛省側に東京都昭島市に登記上の本社を移転する提案がなされたものの、これは登記上の本社移転(機構法との適合のために設置した蒲田の事務所を昭島に移転させる)との趣旨と解されたことから、防衛省はこれを認めないこととなった。
 続く7月2日の第6回委員会では、防衛省側より、府省等との連絡調整など立法趣旨に照らして本部については東京に設置することが適切としてきた、防衛省としては移転半年前の7月から十分な説明を行ってきた、等の説明がなされた。これに対し、出席していた機構理事長からは、法改正を行わない具体的な理由等が明らかにされていない、という不満が表明された。理事長は防衛省側に対して、「考え方を君は完全に間違えている」「今の答えはおかしいんだ、君(防衛省側の課長)は。文書で書いて答えてこい」「そんな変な話するんじゃなくて、今の状況において物を言いたまえ。大臣から宿題おりているだろう。」等の発言を行っている。この理事長の発言について、一部委員からは「あの人が怒ってる気持もよくわかる」としつつ、「あの態度はあれが経営者の態度だろうかと思う」と評されている。
 第6回委員会ののち、7月11日には、防衛省地方協力局長から理事長宛に「機構法との5条との関係で改善案を作成して提出するよう」要請がなされたものの、機構からは、7月17日に理事長から防衛大臣宛として、「法改正がされるまでの間、引き続き大田区の事務所と横浜の
事務所と一体として本部の業務を行う」「昭島市に事務所を設置する案についても引き続き検討する」との回答がなされた。
 7月30日の第7回委員会では、委員から、機構法5条と実質的な横浜移転との関係について「違法」とする見解が示されたほか、別の委員からは、「明確に人事権を持っている大臣が発動してこの理事長を更迭しなければいけない」との発言が見られた。他方で、過半数にあたる3名の委員が「賃借料の大幅な削減がなされた」ことを顕著な実績とする評価や、「機構が何をするかと考えたときに、例えば米軍の基地等で働いていらっしゃる方々の労務管理であると考えれば、これは個人的見解でございますが、横浜にその本部事務所があることは、私はむしろプラスなのではなかろうか」との意見も見られ、委員会においても判断が分かれた。さらに、委員会は防衛省関係者を会場から退席させた上で、機構から直接ヒアリングをおこなうなど、極めて異例の展開となった。
 最終的に、防衛省独立行政法人評価委員会は、「当委員会としては、機構法の枠内で業務を行うことが機構側の責務であり、機構役員会の決定等が国との関係において円滑になされていないと判断し」た、との評価を残している。

(主務大臣からの是正措置要求)
 独立行政法人評価委員会における判断などを踏まえ、9月16日には、防衛大臣から機構に対し、是正措置要求が発出された。これは、独立行政法人制度史上初めての事例にあたる。この是正措置要求などを契機として、10月14日には、機構理事長から防衛大臣に対して、登記上の本部の状態であった、大田区蒲田に理事長自身が常駐する意向が表明されたものの、実質的に横浜市で本部業務を実施する状態については解消に至らなかった。
 上記の経過を踏まえ、11月26日には総務省政策評価・独立行政法人評価委員会が防衛省独立行政法人評価委員会に対し、「今後の評価に当たっては、事務所の移転に関し、防衛大臣から本法人に対し是正要求が出されるに至った経緯及び対応状況を踏まえ、神奈川県横浜市に新たな事務所を設置した理由を明らかにした上で、評価すべき」との意見を表示した。政策評価・独立行政法人評価委員会はその後も、機構役員の退職金算定の機会に際して、「通則法第65 条第1項に基づき主務大臣から是正要求がこれまで発出された例はなく、同項に基づく是正要求が発出された事実は重く受け止めざるを得ない」との認識を示している。

(経営の責任、大臣の関与(オフレコ発言)等の検証)
 平成21年3月12日には、是正措置要求や政策評価・独立行政法人評価委員会による意見を踏まえ、役員(理事及び監事)の退職金再算定を含む再検討が第9回防衛省独立行政法人評価委員会でなされた。この中では、事務所移転を担当した理事及び監査において機構側に肯定的な監査結果を残した監事について、特に責任(独立行政法人の監事が経営と連帯して責任を負うか、否か、等)の観点で議論がなされた。しかしながら、不利な取り扱いを受けた役員個人から訴訟がなされた場合の各委員の責任(行政訴訟であれば防衛大臣が負うが、民事訴訟であれば委員個人も責任負うのではないか、等)が明瞭でなく、結論を下すことへの慎重論が相次いだことから、全委員総意により、継続審議されることとなった。
 なお、この時点で防衛省側は、「本当に違法であると断定することが最も重要なのではなくて、違法性のおそれがあるという事態に至ったプロセス全体に問題がある」として、事務所移転が違法だったのか、否かの断定を避けている。
 7月3日には、第10回委員会が開催され、約1年ぶりに機構理事長が委員会に出席した。理事長は「記録はとらないでください」(後に撤回)と前置きした上で、問題のきっかけである、機構法第5条の改正可否について主務大臣に問い合わせたところ、「国会がねじれているからできない」との返答が帰ってきた旨、明らかにした。さらに、前回委員会で継続審議となった理事及び監事の退職金算定について早期に結論を示すよう求める「不規則な発言」(委員長)なども見られた。同委員会において、防衛省及び機構から、「東京都内」への事務所再移転として、昭島市(横田)への移転を検討している旨も明らかにされた。
 理事及び監事の退職金算定については、同29日の第11回委員会にて取り上げられ、「国と機構が深刻に対立し、異例とも言える是正措置要求が発出された事実」を認定しつつ、「他方で、会計検査院や国会との関係では取り上げられていないこと、社会的な影響も限定的であること」を踏まえ、「移転によって経費の抑制が図られ、「機構の中期目標」との関係では評価できる」として、大きく退職金を減算するまでとは言えないとの結論に至った。この結論については、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会へ回付され、同分科会においても「総合的に勘案すれば、機構の業績が良好でないとまではいえない」とした上で、早期収束を求めた。

(国会質疑から収束へ)
 上記のとおり、「国会との関係では取り上げられていないこと」なども踏まえつつ、独立行政法人評価における結論が導かれたが、翌平成22年には、その国会で、防衛省と機構との対立状態を原因とする財務諸表の承認見合わせなどが取り上げられた。平成22年4月12日の参議院決算委員会では、「法律に書いてある本部を勝手に大臣の許可も得ないで、それも二か所に分けて本部を移転した」件について、野党から質問がなされた。これに対し、防衛副大臣より「大変遺憾である」「私どもからいたしますと、法的には違法状態は解消しているとしているんですが、我々からいたしますと、どうもこれは腑に落ちない、へ理屈ではないかと」との答弁がなされた。他方、問題の発生(平成19年度)から国会で取り上げられる(平成22年度)までの間に政権交代を挟んだこともあり、「おれたちさんざん部屋汚しておいたけど、あんたたち後からしっかりきれいにしろよと言っておる」(防衛大臣)、「私たちが重い荷物をしょわされたわけでありますから、(略)、是非ひとつ、前政権にあられた方々もこういう御指摘をする以上は防衛省に対する真摯な御忠告をお願いを申し上げる次第であります」(同)と、機構との対立関係を、政権交代前の「汚れ」や「荷物」に例える答弁も見られた。国会質疑から程なくして、同21日には、東京新聞が朝刊で「二重本部」、「家賃の二重払い」として、この問題を取り上げられている。
 国会質疑や新聞報道により取り上げられたことは、防衛省独立行政法人評価委員会にも「もうちょっとシリアスに受けとめるようなことのほうがよろしいのかな」(委員)と少なからぬ影響を与えることとなった。8月2日の第15回委員会では、移転当時の理事長(平成21年3月末退任)の退職金算定について取り上げられたが、理事長の業績については「順調に実施ということはまず無理」「新理事長の体制のもとで速やかに是正要求をきちっと履行すべき」といった評価がなされた。委員会の場では、防衛省側から、「今年度中に本部事務所問題についての一定の決着がつけられるように努力していきたい」との意思表示も見られた。政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会も同様に、「防衛省が法改正は行わない旨を再三通知又は連絡していたにもかかわらず、理事長自らが現に本部事務所の移転に関与し、及びこれを決定した責任は極めて重い」と断定した。
 上記のとおり、機構側、特に理事長の責任が取り上げられるに至り、また、実質的な本部機能を担ってきた横浜の事務所の賃貸契約が納期を迎えたことなどから、平成23年2月14日には機構本部の東京都港区への再移転・集約がなされた。これを受けて、同日、防衛大臣が参議院決算委員会にて「財務諸表につきましても承認手続を進めたい」旨を表明した。3年にわたる「不正常な状況」の解消が得られた後となるが、2月16日には、参議院本会議にて以下の警告決議が示されている。
 独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構は、主たる事務所を東京都に置くことが法律で定められているにもかかわらず、本部の実質的機能を他県へ移転し、そのため独立行政法人通則法において毎年度大臣の承認を受けることとされている財務諸表も、平成十九年度以降承認されていない不正常な状況が継続していることは、看過できない。
 政府は、同機構に対し、法令違反の疑義ある状態を早急に是正し、業務の効率化を図るよう、指導を徹底すべきである。
本警告決議を踏まえ、2月25日には、平成19、20、21各事業年度の財務諸表が主務大臣に承認され、一連の「不正常な状況」は解消した。

○影響
 本件は独立行政法人として初となる、主務大臣からの是正要求がはじめて発出されたが、正常化に至るまで2年半近くを要した。このため、内閣官房独立行政法人改革に関する有識者懇談会においても、「主務大臣の意思決定が政策実施等に反映されにくい」問題事例として取り上げられ、後の独立行政法人改革における主務大臣の関与の強化(主務大臣による評価、是正要求に代わる是正「命令」等の導入)に影響を与えたと言える。


○論点
 国会、各府省審議会、府省、機構等の間で取り上げられた点としては以下のとおり。

◎機構法において東京都内に主たる事務所を置くとされているところ、登記上の本社を蒲田に、実質上の本部を横浜に移転させたことが違法状態か、否か。

  • 形式的に蒲田を本社として登記したことで違法状態を回避した(機構-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 事務所を並存させている状況は、機構が機構法第5条に抵触しないようにするためのもの(監事-監事監査報告書)
  • 本当に違法であると断定することが最も重要なのではなくて、違法性のおそれがあるという事態に至ったプロセス全体に問題がある(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 法律に違反して平成20年2月に事務所を東京都から神奈川県に移転した(内閣官房行政改革推進本部事務局ー独立行政法人改革に関する有識者懇談会での説明)
  • 違法状態は解消している(防衛副大臣ー国会答弁)
  • 法令違反の疑義ある状態(参議院ー警告決議)



◎業務運営効率化目標の達成のため、本社の実質的移転を行ったことの評価

  • 中期計画に定める経費抑制の観点からも已むを得ない処置であると思慮している(監事-監事監査報告書)
  • 年間賃借料約1億円を削減。また、東京23区と横浜市との地域手当の差により人件費も約3,000万円を削減見込みにあることなどを総合的に勘案すると、機構の業績が良好でないとまではいえない(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会-役員退職金に係る業績勘案に関連して)



◎機構法の本社所在地に関する規定を改正することの是非、妥当性。また、法律改正を提案する立場にある主務大臣の判断の妥当性

  • どこで労務管理業務を行うのが便利なのか、利便性が高いのかというのはまさに運用主体である機構そのものが判断すること(機構-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 主務大臣からは、「国会がねじれている」から法律改正ができない、と説明を受けておりこれは高度な政治判断であると理解(理事長-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • 国民的理解を得るためには、機構法第5条を改正するのが、現状の問題を継続させない唯一の方法であると判断している(監事-監事監査報告書)
  • 機構法立法時の趣旨である、府省との連絡調整という観点で、本部事務所は東京都内に置くとする規定は変更しない(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • (防衛大臣が「ねじれ国会」を理由に機構法改正を拒否したか、否かについては)ちょっとそれに反応するのは差し控えたいと思います(防衛省-防衛省独立行政法人評価委員会での質疑)
  • この監査報告を普通の国民が読んだらね、どうして変えなかったんですかと。何に固執しているんですかということになるんですよ。経費が削減されて何か問題があるんですかと、横浜に行って。何で本省が法律を改正してこういう効率が図れるようにやらなかったんですかという問いの方がはるかに説得力がある(防衛省独立行政法人評価委員会の一部委員)
  • 法案の話ですからいろいろな流れがあって難しかったというのも何となく想像の範囲内ですけれども、しているんですけれども、むしろ、それなら法案を改正すればいいことだらけのところを何で改正しなかったのか。(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員)
  • ともかく、大変高度なレベルで、我々から考えれば東京から移転すればいいじゃないかという、法律改正をしてもらえば、全部みんなハッピーだったのにもかかわらず、高度なレベルの判断で法律の国会提出はできないということだった(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員、前出とは別)

※平成19年12月には、「独立行政法人整理合理化計画」により、「賃貸料の1億円の削減を図るため、平成19年度中に本部事務所を移転する」旨が示されたが、当初平成20年度を予定していた移転について防衛省と機構側で平行線となっていた状態にありながら、当該移転を加速させる閣議決定に防衛大臣が賛同した理由等については、現時点では不明であり、解明を待たなければならない。
※当時、機構役職員に占める防衛省からの出向者は、移転当時に45.4%、平成21年度には49.4%と半数近くを占めるなど、他の法人と比較してもきわめて異例の水準にある、と言える。役職員のほぼ半数が主務省を母体とする健全性・妥当性については別の議論とするにせよ、ここまで人的交流が濃密な中で、3年近く主務省と独立行政法人が対立関係にあったということ自体が注目に値すると考えられる。


○その他(関係者等の発言)

  • あの態度(理事長の発言)はあれが経営者の態度だろうかと思う(防衛省独立行政法人評価委員会の一部委員)
  • 忠臣蔵ではありませんけれども、実質をとるか形式をとるかということで大変悩みました(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員)
  • 実質的に、これだけ1億円とか3,000万円削減だというのも、事務局に精力的に仮定計算をしてもらって、こんなにいいことをしたんだというのも、このワーキングの事務局に宿題を出して、みんな一生懸命やってくださった成果でございます。そういう点では本当によかったんですけれども、ともかくその前に法律改正できないと言ったにもかかわらず実行した。さらに、形式を整えるために蒲田を借りた。ただ、蒲田の方は200万円ぐらいしか経済的には損失してないけれども、そこでいいじゃないかとまた開き直ったというか、そういうことなので、悩みましたけれども(同上)
  • 我々も相当細かく府省の評価委員会などの議事録の、各個々人の発言を聞きながら、なかなか表現は難しいんですが、独法と主務省との間での人間関係の中で、天下りの問題も絡むのかもしれませんが、いろいろな議論がありました。そういうことを勘案してでも、やはり独法評価委員としてはルールを守るということが重要であり手順を守ることが重要であるということに重点を置いて一度差し戻しました。私どもも苦渋の議論を重ねて差し戻したということを付け加えさせていただきます。(総務省政策評価・独立行政法人評価委員会独立行政法人評価分科会の一部委員、前出とは別)


→独立行政法人の自主性
→業務運営効率化目標
→独立行政法人の役員
→役員会/理事会/理事会議/役員会議

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