2020年6月1日月曜日

国立の研究開発法人(俗語又は誤用)

 「国立の研究開発法人」は、河北新報が用いている造語。令和2年5月29日に、復興庁福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議の資料を一次資料として、配信記事に用いた。
 
(解説)
 この造語を用いた場合、対象が、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律上の「研究開発法人」なのか、独立行政法人通則法上の「国立研究開発法人」なのかが、不明瞭という問題がある。仮に前者の場合は、そもそも「研究開発法人」が、法律に基づき設置され、主務大臣による予算措置を前提とするものである以上、あえて「国立」と付す必要はないと考えられる。事実関係としては、一次資料において「国立研究開発法人」と明記されていたのを、河北新報において記事化されるにあたり、「国立」を強調する観点で、この表現が採用されたものと見られる。
 「研究開発法人」の概念は、「国立研究開発法人」の類型よりも広い範囲を指し、いわば、研究開発法人>国立研究開発法人という包含関係にある。これは、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律における研究開発法人の指定が、独立行政法人通則法上の国立研究開発法人の類型に該当するもの以外の独立行政法人を含めて指定しているほか、制度上の取扱い及び位置付けも詳細において異なる。今回、河北新報が記事のもととした一次資料においては、「国立研究開発法人制度」の適用が謡われていたところ、「国立研究開発法人」と「研究開発法人」のいずれかか、判別のつきにくい造語を用いたことは、厳密性に欠けるとみられるものの、地方紙の視点で「国立」の機関の設置を強調する意図があったとすれば、直ちに誤用とも言い切れない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。