政府予算の執行抑制が独立行政法人に波及した事例としては、平成24年度の「9月以降の一般会計予算の執行について」(平成24年9月7日閣議決定)が挙げられる。国の一般会計に対して公債により賄う場合、建設国債以外の「特例公債」については、都度、法律により「公債発行の特例」として位置づける必要がある。当時、平成24年度の一般会計予算には38.3兆円の特例公債金が計上されていたが、特例公債の発行を許容する法案「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案」(いわゆる「特例公債法案」)については、通常会期末を控えた平成24年9月7日現在も成立の見込みが立たずにいた。このため、「9月以降の一般会計予算の執行について」では、「可能な限り予算の執行を後ろ倒すことにより、財源の枯渇時期を少しでも遅らせる」ため、予算執行の抑制を図ることとした。
これに伴い、独立行政法人に対しては、運営費交付金について「原則として、3ヵ月毎に、予算額を4で除した額の50%に相当する額以上の交付を留保する」(すなわち、当該四半期あたりの額の半額を交付する計算)とされた。この措置の対象となる予算額は年度で 1.1 兆円(3か月当たり約0.2~0.3兆円)と見られている。「戦後初となった大規模な予算の執行抑制」(参議院予算委員会調査室)が独立行政法人にも影響した形であり、水準としても政府部内の「行政経費」や国立大学法人への運営費交付金と同レベルの抑制となった。
なお、財務省が当時、「今回の予算執行抑制に伴う影響」として公表した資料によれば、独立行政法人に執行抑制が波及し、「長期化する場合に懸念される影響」として、
- 新エネルギー研究等を行う独立行政法人については、常に一定レベルに環境を維持し続ける必要がある研究について、設備の運転停止が必要となるおそれ
- 国際協力を行う独立行政法人については、被援助国からの信頼が損なわれたり、一時期に事業が集中して計画どおりの支援を実施できなくなるおそれ
- 製品評価を行う独立行政法人については、必要な設備・人員等を確保できず、重篤な製品事故の原因究明調査等が不十分なものとなるおそれ
などが想定され、「国民生活・経済活動への波及的な影響は生じうるものであり、執行抑制が長期化すれば様々な分野で影響が生じることも懸念される」としている。
最終的に、「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案」は通常国会において成立せず、廃案となり、臨時会である第181回国会において、平成24年11月15日に衆議院を通過、に16日に参議院を通過し成立するに至っている。
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