「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号、行革推進法)及び「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)に基づき行われた、我が国の公的部門における、人件費削減の取組のこと。独立行政法人に対しては、平成18年度から平成22年度にかけての5年間に平成17年度における水準から5%以上の人件費を削除することが基本とされた。さらに、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)による平成23年度までの期間延長を経て、独立行政法人における総人件費改革は完了した(内閣官房行政改革推進本部事務局調べ)とされている。
(前史)
平成17年において、経済財政諮問会議では公的部門における総人件費について、「国家公務員総人件費の対GDP比を10年で概ね半減させるという長期的な目安」を掲げ、「官のリストラ努力について国民の理解を得られるよう、あらゆる手段を駆使して改革を断行」すべし、との議論がなされていた。これは、「総人件費改革基本指針」(平成17年11月14日経済財政諮問会議)としてまとめられ、独立行政法人についても、「公務員に準じた人件費削減の取組みを行う」こととされ、「独立行政法人等に対する補助金や運営費交付金を抑制するよう見直す」旨が示された。
この経済財政諮問会議の決定に基づく総人件費改革の具体的な実行計画にあたる、「行政改革の重要方針」においては、各独立行政法人ごとに、「国家公務員に準じた人件費削減の取組を行うことを中期目標において示」すこと、及び「今後5年間で5%以上の人件費を削減することを基本とする」こと、及び独立行政法人の長の責任においてこれらの取組を中期計画に反映する旨が示された。中期計画への反映は、「公的部門における総人件費改革の取組について」(平成18年1月25日内閣官房行政改革推進事務局・総務省大臣官房管理室・総務省行政管理局・財務省主計局)により平成17年度中に行うこととされた。なお、平成18年度に入り、総人件費改革を規定した行革推進法が成立したことで、これらの措置は法定事項化されれいる。
(削減方法)
「公的部門における総人件費改革の取組について」においては、人件費予算そのものを5%削減する、又は定員を5%削減するか、いずれかの方法による考えが示されている。これを中期計画に明記し、主務大臣の認可を受けた上で、各年度の進捗や達成度合いについては、各府省の独立行政法人評価委員会による事後評価を受けることとされた。なお、事後評価にあたっては、総人件費改革の直接の対象となる範囲(任期のない役職員全てと任期付役職員の一部)における進捗や達成度合いを開示するほか、後述の適用除外となる範囲を含めた、当該独立行政法人全体における人件費の状況について開示することとされた。
(適用除外)
「公的部門における総人件費改革の取組について」以降、「公的部門における総人件費改革について(独立行政法人関係)」(平成18年2月14日内閣官房行政改革推進事務局・総務省行政管理局・財務省主計局)において具体的な解説がなされたほか、「イノベーション25」(平成19年6月1日閣議決定)や「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法第65号、旧研究開発力強化法)等の政策的要求に対応する過程で、特に任期付職員の雇用を通じたインセンティブ(競争的資金の獲得や民間からの外部資金の受け入れ増大等の財政基盤安定化、若手研究者の雇用確保など)を与える分野については適用除外を行う旨が明らかにされている。具体的な時系列は以下のとおり。
- 平成18年4月 競争的研究資金により雇用される任期付職員について適用除外とした(総人件費改革開始当初からの適用除外)
- 平成20年2月 受託研究、共同研究のための民間からの外部資金により雇用される任期付職員を適用除外に追加(「イノベーション25」への対応)
- 平成20年10月若手研究者等を適用除外に追加(「旧研究開発力強化法」に基づく)
(効果と影響)
総務省行政管理局の発表によれば、平成23年までの総人件費改革による効果は以下のとおりと集計されている。いずれも目標値の5%削減の倍以上の効果を獲得している。
- 人件費を削減するとした78の独立行政法人においては、平成17年度比で10.5%の削減
- 人員数を削減するとした16の独立行政法人においては、同13.5%の人員減少
他方、総人件費改革が進むにつれ、以下のような懸念、弊害も指摘されている。
- 独立行政法人国際観光振興機構においては、目標値の4倍、独立行政法人全体平均の倍近い、19.9%の削減を得た。これに対して国土交通省独立行政法人評価委員会においては、「モラルの低下にならないよう注意が必要」「大卒・大学院卒の職員が多く、その中で人件費削減には自ずと限度がある」といった意見が見られている。
- 文部科学省科学技術・学術審議会総合政策特別委員会においては、総人件費改革後の独立行政法人における定員管理も含め、「民間企業で言えば、自分たちの予算の中で人材に割り振るのか、そうではないところに割り振るのかということは裁量に任されておりますが、研究開発法人、国立大学法人は定数に縛られており、そういう意味で、イノベーションを起こしていくのに、定数に縛られている今の形が本当に良いのか」との意見が見られている。
- 研究開発法人においては、研究者の招聘や内部人材の引きとめに影響があり、研究開発法人職員に対し、海外企業から数千万円規模での引抜きオファーがなされた事例が確認(平成25年10月、経済産業省産業技術環境局調べ)されているほか、若手研究者、ポスドク、研究支援人材の確保が困難などの影響(前同)が見られている。
総人件費改革の完了後、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)においては、独立行政法人の人件費について、中期計画の認可を通じて国が関与しつつ、「柔軟な報酬・給与制度の導入」を促進する旨が示されている。
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