2019年4月11日木曜日

主務大臣評価/独立行政法人評価

 独立行政法人の業務実績に対する評価のこと。独立行政法人の長が業務実績報告書(又は自己評価書)を作成するために行なわれるいわゆる「内部評価」との対比で「外部評価」と呼ばれる場合もある。事業年度ごとの業務実績について行なわれるいわゆる「年度評価」のほか、中期目標管理法人及び国立研究開発法人に対して行なわれる、目標期間終了前年度のいわゆる「見込み評価」、目標期間を通じての業務実績を評価するいわゆる「期末評価」が存在する。従来、独立行政法人の評価については、各府省の独立行政法人評価委員会が行なうこととされていたが、平成27年の改正独立行政法人通則法施行後は、主務大臣の関与を強化する観点で、主務大臣が主体となって評価することとされている。

○起源
 独立行政法人制度の骨格を決定した「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)において、各府省に合議制の独立行政法人評価委員会を設置し、「独立行政法人評価委員会による独立行政法人の業務の実績の評価は、同委員会が設定する客観的な評価(例えば、中期目標の達成度合に応じた数段階評価)基準による」、「年度計画や中期計画の作成に当たっては、独立行政法人評価委員会の評価結果を踏まえるものとする」、「独立行政法人評価委員会の評価結果を踏まえて、中期目標の設定、中期計画の認可又は独立行政法人の長等の人事等を行うものとし、任期途中の独立行政法人の長の交代もあり得るものとする」こととされた。

○独立行政法人評価委員会制度の下での運用
 独立行政法人制度の導入後、各府省の独立行政法人評価制度委員会による評価、及び当該評価結果に関する総務省政策評価・独立行政法人評価制度委員会の点検という、階層的な評価が実施されてきた。これにより、外部の第三者機関による累次の評価を経て、「着実に」独立行政法人の「業務の改善がなされ」るとともに、「業務継続の必要性について見直」す仕組みが整備されたとされている。しかしながら、評価制度の運用が進むにつれ、以下のような課題が指摘されるようになった。
  • 問題を起こした独立行政法人に対しても高い評価がなされる事例(独立行政法人緑資源機構においては、林道整備事業の発注に関し、当該独立行政法人主導の談合事件が発覚したものの、平成18年度の事業評価で経費抑制に関する実績について、目標の90%以上を達成したとする高い評価がなされた)
  • 各府省独立行政法人評価制度委員会が設定する「客観的な評価基準」が、各府省ごとに独自となっており、「政府全体としての評価の統一性を欠く」
  • 中期目標期間を総括した評価が次期中期目標策定に活かされていない
 また、「独立行政法人駐留軍等労務管理機構における不正常な状況」をめぐっては、防衛省独立行政法人評価委員会において理事長の更迭について言及がなされる、評価結果を受けて主務大臣より、独立行政法人制度として初となる是正措置要求が発出されるなどの動きが見られたが、結果として3年度にわたって「不正常な状況」が継続したことから、独立行政法人に対する主務大臣の関与の強化の必要性についても指摘されるに至った。

○独立行政法人改革に伴う主務大臣評価の導入
 上記の指摘に対応するため、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月24日閣議決定)において、「PDCA サイクルを強化する観点から、主務大臣自らが業績評価を行うこととする」旨が示された。さらに、「政府全体としての評価の統一性」を整備すべく、「独立行政法人の評価に関する指針」(平成26年9月2日総務大臣決定)が制定され、平成27年4月の改正独立行政法人通則法施行に合わせて、主務大臣評価と新たな評価制度の適用が開始された。
 なお、独立行政法人改革に伴い創設された国立研究開発法人については、総合科学技術・イノベーション会議において、「国立研究開発法人が、自らイニシアティブを発揮し国内外にそのポテンシャルを如何なく発揮する存在となるかどうかは、まさに国立研究開発法人に対する目標の策定及び評価の在り方をどのようなものとするかにかかっているといっても過言ではない」との認識の下、「研究開発の事務及び事業に関する事項に係る評価等の指針の案~研究開発成果の最大化に向けた国立研究開発法人の中長期目標の策定及び評価に関する指針~」(平成26年7月17日総合科学技術・イノベーション会議答申)が答申されるに至った。

○評価手続き
 独立行政法人改革後の独立行政法人の評価に関する流れは以下のとおり。
  1. 事業年度終了後、独立行政法人の長は、6月末日までに内部評価の結果をまとめた「業務実績報告書」を主務大臣に提出するとともに、公表する。
  2. 主務大臣は、上記「業務実績報告書」を受けて、独立行政法人の業務実績について評価を行なう。なお、この主務大臣評価に先立ち、国立研究開発法人については、主務大臣が「研究開発に関する審議会」の意見を聴取することが独立行政法人通則法で規定されているほか、中期目標管理法人及び行政執行法人についても運用として、主務大臣が外部有識者の意見を聴取する場合がある。
  3. 主務大臣が実施した評価の結果は、独立行政法人に通知されるとともに、公表することとされている。また、「遅滞なく」総務省独立行政法人評価制度委員会にも通知する。
  4. 独立行政法人評価制度委員会は、通知された主務大臣評価の結果について、必要に応じて主務大臣に意見を述べる。
 なお、国立研究開発法人のうち特定国立研究開発法人については、総合科学技術・イノベーション会議にも同様の取り扱いを行うこととされている。
 その他、外部有識者の意見聴取の結果、独立行政法人の自己評価に対して厳しい評価がなされた事例として、「独立行政法人国際協力機構における予算逼迫問題」をめぐって、「「一部混乱を招いた」ではすまない深刻な事態と認識している」等の意見が示され、結果、外務大臣が「外務省としても重く受け止めている」「抜本的な改善の取り組みを継続的に行う必要がある」との評価結果を示した例が挙げられる。

○基本的な考え方
 「独立行政法人の評価に関する指針」等によれば、主務大臣が評価を行うにあたっての基本的な考え方(主なもの)は以下のとおり。
  • 法律、閣議決定及びその他政府の種々の方針において、各独立行政法人が取り組むべきとされた事項に関する実施状況について評価を行うとともに、当該独立行政法人の業務等に係る国会審議、会計検査、予算執行調査等の指摘事項への取組状況についても評価する。
  • 関連する国の政策評価、行政事業レビュー及び行政評価・監視の結果を活用して評価する。
  • 評価は、評価単位(≒一定の事業等のまとまり)に合わせて行う項目別評定と、項目別評定を基礎とし法人全体を評価する総合評定によって構成される。
  • 目標及び計画で掲げる指標を基準とする絶対評価とする。なお、研究開発に係る事務及び事業については、研究開発業務の特性等を踏まえ、適切な評価軸に基づき評価を行う。
  • 各独立行政法人の事務及び事業の特性に十分に配慮し、なぜその実績に至ったかについて外部要因の影響やマネジメントの課題等を含む要因分析を行い、業務の改善につながるような実効性のある評価を実施するまた、その際、政府の政策実現への寄与など、当該独立行政法人の目的やその業務の質の向上の観点に留意するとともに、社会経済情勢の変化や技術の進歩等を踏まえたものとする。
  • 評価に当たっては、独立行政法人制度創設の趣旨を踏まえ各独立行政法人の事務及び事業の特性に十分に配慮し、業務が効果的かつ効率的に実施されているかどうかの視点を常に持ち、その業務がどれほどの投入資源を費やしているかについて業務の成果・効果と対比して評価する。
  • 早急な財務内容の改善など、独立行政法人個々に対する社会的要請をも踏まえるものとする。
  • 業務実績報告書を活用する。
 独立行政法人評価制度の詳細については、独立行政法人の類型に応じた違いが存在するほか、組織及び業務の見直しや役員退職金(業績勘案率)などの波及範囲が広く、内容が多岐膨大に渡ることから、各論に関する記事の整備を進めながら、適宜加筆修正していくこととしたい。

→一定の事業等のまとまり/セグメント
→研究開発に関するに関する審議会/国立研究開発法人審議会/日本医療研究開発機構審議会/宇宙政策委員会(独立行政法人評価)
→評価書様式について(平成26年9月2日総務省行政管理局長)(総管査第254号)
→独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構における不正常な状況
→独立行政法人国際協力機構における予算逼迫問題/JICAの資金ショート問題
→政府関係機関移転に関する今後のフォローアップについて(平成30年2月7日まち・ひと・しごと創生本部事務局)

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