2019年5月23日木曜日

予算消化/駆け込み需要(実証されていない仮説)

 独立行政法人制度の創設により克服すべきとされた課題のひとつとして、我が国の公的部門における「年度末の予算消化の悪弊」が挙げられる(平成25年10月23日第2回新たな研究開発法人制度に関する有識者懇談会)。すなわち、独立行政法人において、企業会計的手法や年度繰越、移流用などの弾力的な財務運営を可能とすることで、予算消化の悪弊に陥ることを防止するという制度設計意図が指摘されている。
 他方で、独立行政法人制度の創設後も、独立行政法人において、従来公的部門で見られたような予算消化が継続するのではないかとの指摘(平成14年11月26日参議院厚生労働委員会での質疑)も見られている。従って、独立行政法人制度創設の効果を測定・確保する観点で、仮説的に「独立行政法人においても、中期目標期間末などにおいて、予算消化や駆け込み的な執行がなされているのではないか」と見られていたと言える。

◯仮説の検証
 平成22年度までに財務省は、特に独立行政法人制度における目標期間終了時に残余の予算が国庫に返納されるという点に着目し、「目標期間最終年度における執行率が著しく増加していないか」や「第4四半期において物品等の駆け込み的な購入が行われないか」といった点を検証している。具体的には、平成20年度及び21年度に目標期間が終了した20の独立行政法人について、2年度分の執行状況の内訳を四半期ごとに明らかにし、目標期間最終年度又は年度末において執行が集中するような、予算消化的な傾向が見られないかを検証した。

◯仮説に反した実態
 財務省による検証の結果、全体の傾向として、むしろ目標期間最終年度における執行件数は前年度に比して減少傾向にあり、また四半期ごとの内訳を見ても第4四半期の執行件数は減少していることが確認された。このとおり、仮説に反した実態が明らかになったことから、独立行政法人における予算消化の指摘に関して、財務省は特段抜本的な改善の余地を認めず、引き続き計画的な執行に努めるよう求めるに留めている。

◯更なる執行の前倒し化
 平成27年の独立行政法人会計基準等の改訂を受けて、独立行政法人の運営費交付金については、第3四半期末までに法人内部の配分を確定させる考えが示されたことから、近年の独立行政法人においては、更なる執行の前倒し化を図る必要が生じていると考えられる。

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