「IT調達に係る国等の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」(令和2年6月30日関係省庁申合せ一部改正)は、令和2年6月30日に関係省庁が申合せたもの。同日に持ち回り開催されたサイバーセキュリティ対策推進会議(CISO等連絡会議)にて決定された。「国の行政機関」(府省)において適用してきた「IT調達に係る国等の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」(平成30年12月10日関係省庁申合せ)を一部改正し、当該申合せの対象に独立行政法人等を含めることとしたもの。
〇解説
従来、国等においては、「開発・製造過程において悪意ある機能が組み込まれる懸念が払しょくできない機器等、及びサプライチェーン・リスクに係る懸念が払拭できない企業の機器等を調達しないこと」が求められてきた。上述の平成30年の申合せ以降、令和元年度末までに、83件の「サプライチェーン・リスクの懸念が払しょくできない機器等が含まれている」事例が確認されたことや、申合せの適用開始から1年以上経過したところ、「これまで大きな混乱はなく、適切に運用されている」ことなどを踏まえ、独立行政法人通則法に基づく87の独立行政法人及びサイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)に基づく指定法人に申合せの適用を拡大することとし、旧申合せの一部改正によりこれを反映している。
〇要求内容
「国家安全保障及び治安関係の業務を行うシステム」や「基幹業務システム、LAN等の基盤システム」のみならず「運営経費が極めて大きいシステム」などの観点で、「より一層サプライチェーン・リスクに対応することが必要であると判断されるもの」について、必要な措置を講じることが求められている。契約方式については、総合評価落札方式や企画競争等、価格面のみならず総合的な評価を行う契約方式を採用する。また、仕様条件の決定や製品及び役務を提供する事業者の選定のため、RFI(情報提供招請)やRFP(技術提案要請)を行うことが求められる。
〇意義
WTO政府調達協定や日本政府の自主的措置により、従来、多くの独立行政法人において、一定額(80万SDR以上)以上の情報システムの調達については、総合評価落札方式が原則とされてきたところ。「IT調達に係る国等の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」が、すべての独立行政法人に適用されたことにより、WTO政府調達協定や自主的措置の対象如何、及び金額如何を問わず、重要な情報システムについては総合評価落札方式又は企画競争等によることとなり、価格のほか技術等を評価する調達が一層拡大される可能性がある。
また、従来、独立行政法人に対しては、「独立行政法人における随意契約の適正化の推進について(依頼)」(平成19年11月15日総務省行政管理局長・総務省行政評価局長事務連絡)等により、「制限的な応募条件等の設定」の排除を通じた「競争性の発現」が求められてきたところ。今般、「IT調達に係る国等の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」により、「サプライチェーン・リスク」に対応する余地が陽に認められたことは、大きな転換点となり得ると考えられる。
〇適用
独立行政法人については、「令和2年度予算に基づき令和2年6月30日以降」に「調達手続きが開始されるものから適用」する旨が示されている。
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